4ストロークに感じた未来 サーブ96(2) フォード由来のV型4気筒 刺激的な音響体験の2ストローク

公開 : 2026.04.11 17:50

1960年代にサーブを成長させた、今も未来的な姿の小型サルーン、96。当初の2ストローク・エンジンから4ストロークへ更新され、1980年まで生産は続きました。UK編集部が2台の魅力に迫ります。

ボディロールで感じるグリップの限界

サーブ96へ載る、2ストローク・エンジンは即座に始動し、パリパリっと音色は活発。アクセルペダルを傾ければ、滑らかさに頬が緩む。勢い良く回転は上昇するが、速度上昇とは一致しない。発進時に排気ガスが青白く煙るものの、すぐに透明へ戻る。

運転席には、2スポークの大径ステアリングホイール。速度と燃料、水温のメーター、ヒーターのスライダーがダッシュボードで整列する。ペダルは少しオフセットしているが、運転姿勢は快適。左ハンドルで、コラムシフト・レバーは筆者の記憶と逆の右側だ。

サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)
サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

細いマフラーから、少し場違いなほどの排気音。パワーバンドは特にないが、しっかり回せば充分速い。ステアリングはハイギアで、手のひらには路面の状態が良く伝わる。カーブが続く道を、100km/h前後で飛ばすことも難しくない。

現代的なラジアルタイヤへ交換されているが、路面の凹凸へ滑らかに追従し、身のこなしは軽快。増大するボディロールで、グリップの限界を感じさせるタイプといえる。ブレーキにサーボがなく、望んだ制動力を得るには、相応に力を込める必要がある。

4ストロークに未来を感じたサーブ

自転車のようにフリーホイール構造が組まれ、エンジンブレーキはまったく効かない。回転数を調整しながら、速度維持するのが難しい。豪快な2スト・サウンドで、スピード感は実際の2倍といえる。

2026年には羨ましく聞こえるが、1960年代初頭、サーブは静かな4ストローク・エンジンこそ未来だと考えていた。技術者のトリグヴェ・ホルム氏は上層部の反対をよそに、96のエンジンルームへ収まる、ランチアボルボなど複数のユニットで検証を進めた。

サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)
サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

最終的に採用が決まったのは、フォード由来のV型4気筒。バンク角60度で小さく、トルクが太く、すんなりボンネットの下に収まった。最高出力は65psへ一躍上昇。トルクも8.2kg-m/3000rpmから11.8kg-m/2500rpmへ増え、扱いやすさも改善していた。

0-100km/h加速は24.1秒から16.5秒へ短縮し、燃費は7.8km/Lから10.4km/Lへ改善。最高速度は122km/hから148km/hへ伸び、給油時に混合オイルを足す必要もなくなった。1968年に、96の2ストロークは廃止されている。

面白いほど対照的なエンジンの印象

同時に、デザインチームは見た目を刷新。シルエットはそのままに、新たなフロントグリルと長方形のヘッドライト、大きなガラスエリアを与えている。

ダッシュボードを中心に、インテリアにも手は加えられた。ステアリングホイールにはソフトパッドが張られ、運転席にはシートヒーターも備わった。ブレーキは、フロントにディスクを採用。エンジンブレーキも利用可能になっている。

サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)
サーブ96 V4(1967〜1980年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

今回の、グレー・グリーンの1台は、デイビッド・パーミター氏が所有する1972年。フロントマスクが精悍になった見た目は、新車時には間違いなく最新版に映ったはず。インテリアも明らかに進化し、各部がソフトタッチ加工されているのがわかる。

エンジンを始動させると、印象は面白いほど対照的。フォードのV4らしい、気怠い響きがフロントから放たれるが、2ストロークより遥かに落ち着いている。バランサーシャフトで振動を抑えつつも、目立ってスムーズな訳ではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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