乗るなら2ストか4ストか サーブ96(1) やんちゃなバイクのような排気音 航空機メーカーらしい空力ボディ

公開 : 2026.04.11 17:45

1960年代にサーブを成長させた、今も未来的な姿の小型サルーン、96。当初の2ストローク・エンジンから4ストロークへ更新され、1980年まで生産は続きました。UK編集部が2台の魅力に迫ります。

やんちゃなバイクのような2ストの排気音

遠くから、やんちゃなバイクのような甲高い排気音が近づいてくる。ご高齢の村人が、怪訝そうな顔で振り返る。ところがやって来たのは、スウェーデン生まれのずんぐりしたクラシックカー。犬の散歩中だった彼は、美しいね、とつぶやく。

サーブ96のスタイリングは、新車当時から賛否両論を呼んできた。1950年代に生まれた92の進化版で、1960年発売のモデルだが、今でも未来的に感じられる。1980年に生産が終了するまで流行へ流されず、無二の存在感を示してきた。

ブルー・グレーのサーブ96と、グレー・グリーンの96 V4
ブルー・グレーのサーブ96と、グレー・グリーンの96 V4    マックス・エドレストン(Max Edleston)

航空機が本業だったサーブならではといえる、空力的なボディ。人間工学に基づいた、丁寧なキャビンレイアウト。英国メーカーにはない、思慮深さを求める人へ好まれた。

そんな96には、特徴が大きく異なる2種が存在した。1つは、初期型の2ストローク・エンジン版。841ccの直列3気筒で、欧州の主要市場では時代遅れな仕様といえた。他方は、1.5LのV型4気筒エンジン版。4ストロークで、時代に即した仕上がりにあった。

空力に優れた曲線基調のモノフォルム・ボディ

サーブ・オートモビルABは、事業の多様化を図ったスウェーデンの航空機メーカー、スヴェンスカ・オートプランABの自動車部門として1945年に創業。技術者のシクステン・サソン氏が設計を率いた、小さな前輪駆動モデル、92でスタートを切った。

ボディは曲線基調のモノフォルムで、先進的だったモノコック構造を採用。既にDKWの特許が失効していた、小型・軽量な2ストロークエンジンで生産コストを抑えつつ、北欧の冬へ対応する強力なヒーターをエンジンルームに搭載した。

サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)
サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

排気量764ccの2気筒で、最高出力は25ps。3速MTを介し、前輪が駆動された。最高速度は104km/h。簡素が故に、整備もしやすかった。92というモデル名は、航空機の90と91に次ぐ番号として与えられている。

給油時に混合オイルを補充する不便さ

流線型のボディは、リアヒンジの2ドア。大きな荷室は備わったが、テールゲートなどはなく、車内から荷物を押し込む必要があった。2ストロークだから、給油時にはガソリンと一緒に、専用の混合オイルを一定の割合で補充する必要もあった。

多少の不便さはあったが、1949年に生産が始まり、スウェーデンを中心にヒット。1955年に93へ進化し、3気筒エンジンは748ccへ拡大され、33psの最高出力を得た。

サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)
サーブ96(1960〜1967年/2ストローク/欧州仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

同時に電装系の電圧は6Vから12Vへ昇圧され、独立懸架式のサスペンションは、前がトーションビームからコイルスプリングへ改良。ツインキャブレターで50psを発揮する、ラリー志向なGT 750も追加されている。

1959年には、7シーターのステーションワゴン、95が登場。その頃には、北米への輸出が収益の軸を構成するようになり、年間の生産数は5万台へ拡大していた。そして1960年2月に、96へバトンタッチする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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