マセラティ・グランカブリオが好きすぎて……春【日本版編集長コラム#75】

公開 : 2026.03.29 12:05

淀みのない加速感はまさにグランカブリオの白眉

そういった歓びは、ドライブしても変わらない。いや、もっと増していった。

まず、クローズドで高速道路を走っていて感じたのは、圧倒的なGT性能の高さ。『ネットゥーノ』と呼ばれるV6ツインターボの加速がとにかく気持ちよく、その淀みがない感じはまさにグランカブリオの白眉だ。

過去のイタリア車ではあまり期待できなかったインフォテイメント系の使い勝手も良好。
過去のイタリア車ではあまり期待できなかったインフォテイメント系の使い勝手も良好。    平井大介

高速の加速が気持ちいいV6ツインターボのマセラティと言えば、かつての3200GTを思い出す。さらに遡れば、1981年にマセラティは市販車で初めてツインターボ(=ビトゥルボ)を採用しており、つまりは彼らのお家芸でもある。

その気持ちよさはスポーツモードでさらに高まり、しかしそれは『スーパーカー』というよりは『ラグジュアリースーパースポーツ』と呼べるだけの高級感、質感を伴ったもの。ドアに二重ガラスを採用していることも、クローズド時の快適性と無関係ではないだろう。

エキゾーストの音質は速さよりも官能性を重視した印象で、ソフトトップを開ければ、その世界はさらに魅力的なものへと変貌する。

また、過去のイタリア車ではあまり期待できなかったインフォテイメント系の使い勝手も良好。ディスプレイのグラフィックが綺麗であること、ブルートゥース接続がスムーズであること、そしてナビが日本のアイシン製であることは、強調しておきたい部分だ。

唯一のウィークポイントは、オープン時のリアラゲッジスペースが決して広くないことだろう。筆者のスーツケースはギリギリ高さが足りず収まらなかった。しかしこれは『オシャレは我慢』みたいな話で、乗る側が合わせるべきというのもイタリア車らしい部分だ。念のため、クローズ時はちゃんとクーペ同様の広さになる。

生まれながらのエレガントさ

1990年代終盤、後に所属するカー・マガジン編集部が、8台のスポーツカーを同時に長期レポートへ導入したことがあり、そのうちの1台がまだ新車で購入することができた、ビトゥルボ時代のマセラティ・ギブリだった。

会社の駐車場で初めて動かした時は、アクセルペダルの踏み方ひとつから癖だらけ。常に『ウィーン』という謎の音が聞こえてきて、イタリア車に慣れている筆者でも「うわぁ、なんだこりゃ」と思ったのをよく覚えている。デザインもロジックも独特で、当時、誌面でマセラティは『妖しい』と形容されることも多かった。

マセラティは、生まれながらのエレガントさを身についている。
マセラティは、生まれながらのエレガントさを身についている。    平井大介

しかし、現代のマセラティは妖しいというよりは、もっとストレートにラグジュアリーだ。そしてイタリアの貴族、言い換えれば真のセレブリティが乗るに相応しい、生まれながらのエレガントさを身につけていると思う。それはもちろん演出ではなく、また、グランカブリオに限らず全てのマセラティに息づいている。

イタリア車を乗り継ぐ筆者にとって、そんなマセラティこそ永遠の憧れであり、常に『いつか見た夢の先』にあるクルマだ。グランカブリオと接し、そんな気持ちを再確認した2026年の春であった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

日本版編集長コラムの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事