従来のヒエラルキーに甘んじない『アウディ・ヌヴォラーリ』 「大型のTT」や「控えめなランボルギーニ」に非ず【UK編集部コラム】
公開 : 2026.06.06 07:45
アウディが発表した499台限定のスーパーカー『ヌヴォラーリ』は、きょうだい車ランボルギーニ・テメラリオとはまったく異なる存在となっているようです。細部に至るまで徹底的にこだわり、独自色を打ち出しています。
きょうだい車とはまったく異なるキャラクター
『ヌヴォラーリ』に関するあらゆる情報から、アウディには、『R8』がガヤルドあるいはウラカンに次ぐ存在として扱われてきた従来のヒエラルキーに甘んじるつもりはほとんどないことがうかがえる。
この新型スーパーカーは、テメラリオというきょうだい車よりもさらに高い出力を誇り、フルカーボンボディも備える。さらに限定生産となるため、ラ フェラーリのような希少性が保たれる。つまり、安易に「大きくなりすぎたTT」と揶揄することのできないクルマだ。

とはいえ、筆者はR8のように、他のほぼすべてのミドシップ・スーパーカーとは一線を画す成熟さを、ある程度は引き継いでくれることを願っている。初代モデルを特徴づけていた見事な流麗さは、後年、よりダイナミックな攻撃性へと置き換えられたが、どの時代のアウディR8も、試乗の際にはわたし達記者が真っ先に乗りたがるクルマだった。アストン マーティンDB11と同じくらい魅力的かつ気取らない様子で、秋のウェールズからの帰路400kmを軽々と走り抜けるのだ。
では、このヌヴォラーリはランボルギーニと比べてどう映るだろうか。
テメラリオは間違いなく神経質だ。最大1万rpmに達するため、エンジンは低回転域が少々単調になりがちなようにチューニングされている。特別な感覚を得るには、本気で走り込む必要がある。複雑なシャシーも同様で、2トン近い車重にしては素晴らしい安定性と機敏さを発揮するものの、その前に主導権をしっかりと握る必要がある。
鍵を握る電子システムのチューニング
アウディはテメラリオと同じパワートレインとアーキテクチャーを採用しているが、現代のシステムは極めて繊細で無限に調整可能であるため、両車はまるで無関係なクルマのように感じられるかもしれない。
ここで言及しているのは、ダンピングレートやキャスター角、車高といった単純な要素だけではない。リアステアリングのキャリブレーション、スロットルバイワイヤのマップ、フロントアクスルに搭載された電気モーターのトルクベクタリング能力に加え、防音対策、コックピット内の素材の質感、そしてヒップポイントの微調整まで含まれる。その差異が生じる可能性は極めて大きい。

ランボルギーニから移籍してきたアウディの新技術責任者ルーベン・モール氏は、テメラリオの開発にも携わっていた人物で、こうした事柄に徹底的にこだわっている。レヴエルトの発表後、サンタアガタでのインタビューの中で、彼が「昨今なら工学部の学生でも完璧なサスペンションジオメトリは描ける。真の魔法は電子システムのチューニングにある」といった趣旨の発言をしていたのを覚えている。
ヌヴォラーリは、彼のこの考えを実証する絶好の機会だ。このマシンは、テメラリオとはキャラクターがまったく異なるだけでなく、ある瞬間にはR8のようなグランツーリスモらしい振る舞いをしつつ、サーキットでは911 GT3と互角に渡り合えるのだろう。
筆者に試乗の機会があるかどうかはわからないが、心待ちにしている。
























