ボナムス・ビューリーズ・セール

●2016.09.03　2016.09.03 ビューリー／イギリス
ボナムスが9月3日に開いたもうひとつのオークションがビューリーズ・セールだ。コアなマニアが集まるイベントに併催されるだけに、その内容は例によって極めてディープなものだった。

 
世界最大のオートジャンブルとして親しまれているのがロンドンの南西に位置するビューリーにあるナショナル・モーター・ミュージアムで開かれるビューリーズ・インターナショナル・オートジャンブルだ。古今東西の4輪車、2輪車本体を始め、パーツやグッズ、書籍、カタログ、モデルカーを扱う専門ショップや個人までが世界中から集って店を開く。興味の無い者にとってはゴミにしか見えないようでも、それを探しているオーナーにとってお宝のパーツが潜んでいるのである。

このようなディープなイベントの1プログラムとしてボナムスのオークションが開かれた。このオークションは通常のオークションとは異なり、フェラーリに代表される華美なクルマは一切無く、佳き時代の今やその名が消えてしまったオースチン、モーリスからライレー、ウーズレー、サンビームを始めとする英国のメイクスが主役だ。それらもミント・コンディションのバリ物ではなく、使い込まれた風情を漂わすものから、納屋で発掘されたプロジェクト、シャシーだけやエンジンだけとビューリーならでは物件が用意された。

今回のオークションにはオートモビリアが253点、2輪車が43台、そして4輪車及び付属するエンジンを含め118台（点）が用意され、ここでは4輪車を中心に紹介してゆく。4輪車118台が出品され、その内の90台が落札され、落札率は76.2%とまずまずの結果だった。しかし落札額を見てゆくと、このオークションの性格が理解できる。1000万円以上で落札されたのは僅か7台のみで、逆に300万円以下は57.7%となる52台、さらには100万円以下で落札されたのは23台と、庶民的なオークションなのだ。自らオイルまみれになって旧いクルマを直して楽しむオイリー・ボーイのために用意されているのである。逆にビューリーズではレストアが施されて高価な車両は、敬遠される傾向にあるようだ。

ここのイメージカーとして出品された1932年型アルファ・ロメオ 6C 1750 シリーズ5 グラン・トゥーリズモ・コンプレッサーは、メインとなる客層の好みに合わなかったようで4140万円と思われる最低落札額に届かず流れてしまった。最高落札額を記録したのは1953年型メルセデス・ベンツ 300S クーペの29.27万ポンド／4040万円だった。これに続いたのは1959年型アストン・マーティンDB4シリーズ1の20.31万ポンド／2803万円だが、このDB4はレストアが必要なプロジェクトというところにビューリーらしさが見えてくる。

出品車は見る者の嗜好により価値判断が異なるため細かくは記さないが、直すことを前提としたクルマであればロールスやベントレー、モーガンでも破格で手に入り、普通のサルーンならばリーズナブルな額で手に入れられる。それだけに往年の英国車を愛するファンにとっては垂涎のオークションと言えよう。興味のある方はリザルトをじっくりとチェックしてみてはいかがだろうか。しかし、このオークションを見ると、イギリスのクルマ趣味の幅広さと深さを、改めてだが感じさせられる。

今回は落札された車両のほか、流札した車両の中から趣味的に興味深いものもご覧いただこう