ロードテスト フォルクスワーゲンUp! GTI ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2018.05.13 10:10  更新 : 2018.05.14 15:12

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★☆☆☆

パフォーマンスのクオリティは、この価格帯とパフォーマンスブランドとしての格付けから期待される以上のものがある。おそらく、ジュニア級ホットハッチではそれなりのタイムしか出ないと思うだろうが、それを補うエンジンの元気さや鋭いピックアップを備えているものだ。Up! GTIはその手の妥協を十分に打破しているが、完全にというわけではない。

3気筒ターボのスロットル・レスポンスは完璧ではないが、十分な力強さやエネルギッシュさ、好ましさには唸らされる。中回転域を通して、スロットルペダルを踏み込むたびに押し寄せるようなトルクが、3速や4速であってもこのUp!を鋭く加速させる。0-97km/hの実測タイムは最速8.3秒で、アバルト595に対する遅れは0.5秒未満、公式データの0-100km/h=8.8秒もわずかながら上回りそうだ。

さらに走らせてみると、活発で熱烈な走りっぷりをみせるが、高速道路の速度域くらいになると加速が際立ったものではなくなる。

2500〜5000rpmでエンジンをハードに働かせるのは確かに楽しいのだが、スロットルペダルを踏み続けレッドラインの6500rpmまで回すのは思ったより心踊る行為ではない。最後の数千rpmを使うのはベストではなく、この手のクルマでそれをするのはせっかくの機会を手放すようなものだ。

同じく、6段MTのシフトクオリティは立派なものだが、この上なく特別だというほどではない。ギア比はちょっと奇妙に思えるほどワイドで、シフトレバーの動きの精確さや滑らかさは平凡。シフトチェンジが嬉しくなるというような類のものではない。細かいようだが、そうした点は安価だろうと高価だろうと、ドライバーズカーを標榜する以上は重要だ。われわれとしては、それが不可能だと納得できる理由はない。自信を与えてくれるような堅牢さやプログレッシブなフィール、驚くほど強力なブレーキなど、フォルクスワーゲンがディテールに目を向けていることを示す箇所もあるのだが、明らかに見落としもある。

テストコース

常に安定志向な初期ステアリングレスポンスと折り合いをつけてしまえば、ハードなコーナーでは外輪側に荷重がかかり続け、活き活きとコーナリングする。

これは、過激なロールをみせるクルマではなく、驚くほどフラットなボディコントロールを保ち続ける。しかし、一旦ターンインすれば、思い通りにできる横グリップレベルはデリケートで、パワーのオン/オフで自由にコントロールできると気づくだろう。

そう、自由に。あるポイントまでは。カットできないスタビリティコントロールがせっかくの楽しみに待ったをかけ、ブレーキによって後輪を走行ラインへ引き戻すまでは。そこに疑問を挟む余地はない。

そうであっても、ESPシステムが働くまでの間には十分に楽しめる。それはフロントタイヤが、グリップの限界をきっちりと教えてくれるからだ。

シャシーはT2にしっかりと飛び込んでくれることはなく、脱出であまり果敢に攻めすぎるとアンダーステアに陥る。しかし、ESPが介入するまでは、ニュートラルをちょっと超えるくらいまでスライドしてくれる。

逆バンクのT4とT7では、挙動のコントロールは容易だ。ステアリング操作の前に、ESPがそれを矯正してくれる。

トランスミッションによる上下動は、リアサスペンションの硬いトーションビームではうまく抑え込めていない。それほどスピードを上げていなくても跳ね、車体をラインから逸れさせる。

発進加速

テストトラック条件:湿潤路面/気温1℃
0-402m発進加速:16.6秒(到達速度:137.6km/h)
0-1000m発進加速:30.7秒(到達速度:166.6km/h)

フォードフィエスタ1.0T125タイタニウム
テストトラック条件:乾燥路面/気温24℃
0-402m発進加速:17.5秒(到達速度:132.9km/h)
0-1000m発進加速:31.8秒(到達速度:168.8km/h)

制動距離

テスト条件:湿潤路面/気温1℃
97-0km/h制動時間:2.79秒

フォード・フィエスタ1.0T125タイタニウム
テスト条件:乾燥路面/気温24℃

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