試乗 マセラティMC12 エンツォ・フェラーリの心臓を持つロードゴーイングGT1

公開 : 2019.07.06 07:50  更新 : 2020.12.08 10:40

内面はエンツォと共有するも、大きく異なるアピアランス

マセラティのエンジニアはフェラーリ製の6速電動油圧セミオートマティックも流用している。ステアリングコラムに固定されたシフトパドルで操作可能で、わずか150ミリ秒で変速が完了する。もしスポーツモードで満足できない場合、レースモードを選択すればいい。ホイールスピンをコントロールするASRの設定を緩め、ギアチェンジのスピードは更に速くなる。

この2台の間で大きく異なるのはサスペンション。エンツォ・フェラーリがアクティブダンパー・システムを採用する中で、マセラティは従来式といえる、プッシュロッドで可動するダンパーを備えたダブルウイッシュボーン式を採用。ただし歩道に乗り上げる際などに役立つ、スイッチひとつでフロントノーズの高さを上げる機能は搭載している。エンツォよりも鼻先の長いマセラティMC12では、一層有用な機能だ。

マセラティのエンジニアが対応しなければならない技術的なタスクを考えると、プロジェクトは比較的速いペースで進んだといえる。開始から5ヶ月後、2002年の9月にはスタイリングの大枠がほぼ固まる。BMW X5の成功でも有名なカーデザイナーのフランク・ステファンソンは、かなり多忙だったに違いない。

エンツォと比較すると、サイズ感はかなり違う。全長、全幅、全高のいずれもひと回り以上大きい。全幅と全高はそれぞれ50mmほど追加され、全長は440mmも長くなっている。細身で洗練された印象のあるエンツォ・フェラーリに対して、マセラティMC12はより実戦的。伸びた前後長の殆どはフロントとリアのオーバーハングに当てられ、巨大なリアウイングと協働して巨大なダウンフォースを発生させる。

ボディパネルの内に隠されたメカニカルな部分は兄弟車とも呼べる構成ながら、エクステリアでエンツォと共有するのはフロントガラスのみ。それ以外の部分は大きく異なり、2台のデザインは写真を見ても分かる通り全くの別物だ。愛らしいと呼べるものではないが、荒々しさ剥き出しの、そのほかのロードゴーイングGT1とは異なる雰囲気をMC12は漂わせている。

エッジが目立つ角ばったエンツォと対象的に、マセラティのフロントマスクは有機的。滑らかなボディラインに、大きく口を横に広げて微笑んでいるようなグリルが収まる。ボンネットには大きなエアスリットが穿たれており、今回の写真撮影のような夏の陽光を受けた環境では、強い陰影を描き出す。

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