ブーストアップで292ps アルピーヌA110 S シリアスが良いとも限らない

公開 : 2019.11.04 18:50  更新 : 2021.05.13 12:00

プラスされたサウンドとフィードバック。アルピーヌA110のトップグレードとなる「S」に試乗しました。グリップ力と操縦性も高められ、スピードも獲得していますが、標準のA110ほどの楽しさはないと英国編集部は評価します。

A110はスポーツカーとして非凡な存在

text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
新しく追加された高性能版のアルピーヌA110 Sで、至らない部分を探すのは難しくない。A110のバージョン2というわけではないからだ。

アルピーヌでチーフエンジニアを務めるジャン・パスカル・ドース。以前のデビッド・トーヒッグから新たに就任した彼は、ケーターハムとのジョイントベンチャーだった頃からA110プロジェクトに関わってきた古株。ルノーのモータースポーツ部門に戻った時に、彼が持ち帰って来たものが、返り咲いた。

アルピーヌA110 S
アルピーヌA110 S

「(A110の)プロジェクトの当初からSは計画していました。アルピーヌの顧客の希望を理解していましたから。より高いパワーとスピード、グリップ力に正確性。サーキットでの安定性も。シンプルです。環境規制が厳しくなることがなければ、もっと早期に導入できたかもしれません」

「批判に対しての答えではありませんし、弱点に対しての修正版でもありません。(A110に)それほど多くの否定的な意見があるとも考えていません。市場やメディアの反応を見れば理解できます」 彼の意見に沿うかたちで、A110の販売台数に対してA110 Sの販売台数比は、3:1になると見込まれている。

販売台数が結果として現れれば、このA110がどれほど特別で非凡な存在なのかを、立証することになるだろう。このカテゴリーの場合、ドライバーの多くは最もパワフルで走行性能の高いグレードを選択する傾向が強いのだから。

ブーストアップで40ps増しの292psを獲得

アルピーヌのオーナーは、このクルマが備える「レス・イズ・モア(少ない方が素晴らしい)」という哲学に共感してドライブしていることの裏付けにもなる。反面、一般道とサーキットでA110Sを試乗した筆者としては、多くのオーナーが内心感じていることに同意できるとも感じた。

A110 Sは明らかに通常のA110より速く、正確な操縦性を叶えている。サーキットでの周回速度も高い。走行性能を拡張したことで、従来のA110がカバーできていなかった領域まで補うことに成功している。でも、わたしが「S」を選ぶかどうかは別だ。

アルピーヌA110 S
アルピーヌA110 S

Sを要約すると、ターボブーストを上げ、車重を軽くし、サスペンション構造を鍛え直したモデル。車重は通常オプションとなる軽量な18インチの鍛造ホイールと、カーボンファイバー製のルーフパネルによって7kgダイエット。

ただし、どちらのパーツも標準モデルでも選択ができるから、最も軽量なA110はエントリーグレードのピュアということにはなる。

1.8Lの4気筒ターボエンジンは、40ps増しの292psを獲得。最大トルクは、トランスミッションの許容値の都合で32.5kg-mと変わりないが、発生回転数は広げられている。加速性能は1kmダッシュで0.5秒短縮しているとはいえ、0-100km/h加速でのカットは0.1秒だけ。最高速度も10km/h増えた程度。

改良を受けたサスペンションは、車高を4mmダウン。スプリングレードは50%のプラスで、アンチロールバーの剛性は倍になっている。ダンパーの減衰力も見直され、タイヤ幅は10mm広げられている。ブレーキも前後に直径320mmのディスクを採用し、力強い制動力も得ている。

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