今あらためて試乗 BMW Z3 小粋で軽快、「これで充分」と思える懐かしさ

公開 : 2019.11.10 05:50

たいへんきれいなBMW Z3に試乗。さすがに古さを感じることがありますが、なにより「これで十分」と思える素朴さがあります。完ぺきのちょっと手前。スポーツカーの必須項目。これらが愛おしさに繋がります。

もくじ

バブルの後、Z3がデビューした頃
良性のスカットルシェイクが懐かしい
完璧すぎない感じがちょうどいい

バブルの後、Z3がデビューした頃

text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
photo:Satoshi Kamimura(神村 聖)

とてもコンディションの良いBMW Z3を目の前にして、さほど気持ちが盛り上がらないのは、かつてこのクルマと生活を共にしていたからだと思う。

1998年頃に筆者が毎日のアシとしていたZ3は、BMWジャパン15周年記念車としてデビューしたアニバーサリー・エディション。というとなんだか豪華そうに思えるのだが、実際には1.9Lの直4エンジンと5速マニュアルを組み合わせ、幌も手動で開ける特別感の希薄なモデルだった。

現代のオープンカーと比べるとウエストラインが低く、フロントウインドウが大きく立ち上がっている。かつての3シリーズがそうだったようにこのサイズのボディで直6エンジンを搭載しているのは、ダウンサイジング全盛となった現在ではとても贅沢だ。
現代のオープンカーと比べるとウエストラインが低く、フロントウインドウが大きく立ち上がっている。かつての3シリーズがそうだったようにこのサイズのボディで直6エンジンを搭載しているのは、ダウンサイジング全盛となった現在ではとても贅沢だ。

当時はバブル景気が崩壊してから随分と時間が経っていた。けれど自動車シーンは衝突安全、環境性能なんていうキーワードはまだ二の次といった感じで、速さや楽しさといったものに焦点を当てていたように思う。

ライバルのメルセデスSLKは電動開閉のトップやスーパーチャージド・エンジンを持っていたし、エリーゼやMG-Fはミッドシップ・レイアウトだった。そんな賑々しさと比べるとZ3は実に質素に感じられたのである。

埼玉の越谷にあるBMWスペシャリスト、オートスクエアーエノモトが扱っているBMWは90年代から2000年代初頭のモデルが多い。つまりどれも20年落ち近いのだが、だからこそ程度の悪い個体は皆無で、時間を超越した美しい1台と出会ってハッとさせられる。

今回のZ3 2.2は走り出してから徐々に懐かしさがこみあげてきて、20年数年後の今だからこそわかる楽しさも伝わってきた。

良性のスカットルシェイクが懐かしい

今回の個体は2002年式なのでZ3としては最後期型といえる。筆者が乗っていた初期型は1.9Lエンジン、MT、左ハンドルだったが、今回は2.2、AT、右である。だが現代のオープンカーよりはるかに開放感のあるキャビンや軽快な滑り出し、時折起きるスカットルシェイクは記憶の中のZ3そのものだった。

「スカットルシェイク」は20世紀のオープンカーのインプレッションには必ずと言っていいほど登場する。固定式の屋根がないおかげで、路面の段差を越えた時などにドア・ヒンジやフロントウインドウ周辺がブルンッと揺れることを指す言葉である。

エアバッグの大きさが時代を感じさせるコクピット。まだナビモニターもなく、オーディオも1DINサイズ、サイドブレーキもレバー式という20世紀車のセオリー通りの眺めがそこにある。ドライバーズエイドはシンプルなASCの時代である。
エアバッグの大きさが時代を感じさせるコクピット。まだナビモニターもなく、オーディオも1DINサイズ、サイドブレーキもレバー式という20世紀車のセオリー通りの眺めがそこにある。ドライバーズエイドはシンプルなASCの時代である。

Z3はオープンボディで設計されており、いわゆる「屋根切り」ではないが、スカットルシェイクはちゃんとある。

だが重要なのはそれが「良性」である点だ。コーナリング中のブルンッという衝撃と一緒に挙動を乱してしまうオープンカーも少なくないが、Z3のアシはいかなる時も的確に路面を捉えることができる。

またZ3でたびたびサーキットを走っていた記憶を掘り起こせば、イヤというほど粘ってくれる当時最新のマルチリンクサスと違い、早めから穏やかなテールアウトを許容する熟成なったセミトレーリングアームは、ドライバーズカーとしては歓迎すべきものだった。

そう、Z3には今日にない素直なオープンスポーツカーの素養があるのだ。

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