【2年では足りない?】ベントレー・コンティニュエーション・シリーズ 4.5リッター・ブロワー復活の裏側

公開 : 2020.06.13 08:50

はるかに困難な作業

スキルさえあれば、本物のブロワーをベースに12台のレプリカを再現するなど、大した仕事ではないと思うかも知れない。

最新のソフトウェアを駆使して、分解したオリジナル車両からすべてをデジタルデータ化し、パーツ生産を行うとともに、入手可能なレストア部品(すでにベントレーでは過去のモデルのパーツ再生産を行っている)をどこで使用するか決断し、組み立てを開始するだけだと。

悪魔は細部に宿る:ナットやボルト、グロメットなどを正しく再生産するには、2号車を細部まで分解する必要がある。
悪魔は細部に宿る:ナットやボルト、グロメットなどを正しく再生産するには、2号車を細部まで分解する必要がある。

だが、実際にははるかに困難な作業であることが明らかとなっている。

「ブロワーはすべて同じ仕様だと思っていました」とデービーズは言う。

「すべてが同じスタンダードシャシーを使っていると思っていたのです。ところが、実際はそうではありませんでした。バーキン卿のモデルはすべて個別に生産されており、シャシーの主要部材にはスタンダードモデルの4.2mmではなく、5.3mmのスチールが使用されています」

「さらに、スタンダードのブロワーがシャシー接合にホットリベットを使用している一方、レーシングモデルではボルト締結が採用されています。ラボで調べたところ、スチールのグレードも異なっていました」

「幸いにも、非常によく似た引張強度と硬度を持つ現代のスチール素材を特定することが出来ましたが、こんな問題に直面するとは予想もしていませんでした。そして、こうした問題がまだまだ残されているのです」

実はバーゲン?

デービーズと彼の少数精鋭のスタッフ(「小規模なチームというのがこのプロジェクトの素晴らしい点です」)はすでにほとんどの測定を終え、材料選択と交差の設定に着手しているが、例えば、90年前、サーキットのパドックを舞台に、突貫で行われたエンジンルーバーの改造を再現すべきかどうかといった、細かな仕様決めにも取り組んでいる。

そして、どのスーパーチャージャーを採用するかという問題も残っていると言う。

悪魔は細部に宿る:ナットやボルト、グロメットなどを正しく再生産するには、2号車を細部まで分解する必要がある。
悪魔は細部に宿る:ナットやボルト、グロメットなどを正しく再生産するには、2号車を細部まで分解する必要がある。

「毎回写真を確認するたびに違った風に見えるのです」と、デービーズは話している。

こうした問題に加え、現存しないマテリアルを探し出す必要もあり、例えば2号車のダッシュボードはパリのビリヤード場から、コクピットに居並ぶスイッチはヴィクトリア時代の照明からもたらされたものだ。

さらに、英国サイズのボルトとナットを探し出すとともに、マグネシウム合金製のバルクヘッド(1台当たりふたつ必要だ)も必要となる。

ボディカバーと室内トリムに使われている人工皮革のRexineは、数年前に生産が終了した時、先見の明のあるベントレー愛好家がその製造権を取得しておいてくれたお陰で問題とはならないだろう。

突然、このプロジェクトに要する2年という期間が短く思えてきた。

何故このプロジェクトが世界最高の専門家のひとりに任されることになった理由もいまなら理解出来る。

大きな声では言えないが、150万ポンド以上というその価格も、実はバーゲンなのではないだろうか?

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