【ネックは航続距離200km】マツダMX-30(EV仕様プロトタイプ)に試乗 レンジエクステンダー版も計画か

公開 : 2020.10.13 10:20  更新 : 2021.03.07 00:16

上品で洗練され、装備も充実。快適な乗り心地と手頃な価格のマツダMX-30(EV仕様)。しかし航続距離の縛りで、少なくないユーザーを逃す可能性があると指摘する英国編集部。量産前のプロトタイプを評価しました。

他社とは異なるマツダの主張

text:James Attwood(ジェームス・アトウッド)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
自動車メーカーは、それぞれ様々な意見を持っている。新しいスタイリングのSUVには、多様な主張を耳にする。特にマツダには、ほかとは異なる思想がある。

ロータリーエンジンから圧縮点火技術を用いたガソリンエンジンまで、独自路線を進んできたマツダ。大きな変革時期にあって、電気自動車に対するアプローチも同様のようだ。

マツダMX-30 e-スカイアクティブ GTスポーツ・テック・プロトタイプ(欧州仕様)
マツダMX-30 e-スカイアクティブ GTスポーツ・テック・プロトタイプ(欧州仕様)

マツダは、純EVを特有の視点で捉えている。走行時の排気ガスに含まれるCO2だけでなく、クルマの生産から利用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体で、環境負荷を捉えるべきだという考えを持つ。

事実、大きなリチウムイオン・バッテリーを搭載する純EVの製造過程では、内燃エンジンを積んだクルマの製造以上にCO2を排出する。気候変動を引き起こすCO2の排出量は、ライフサイクル全体で見るべきだという考えは、筆者も理解できる。

同時にマツダは、消費者の動向と、厳しくなる排気ガス規制との両方に対応するため、純EVが必要なことも理解している。そこで生まれたのが、マツダMX-30だ。

装備も充実し、値段だけ見れば充分に競争力は高い。英国での販売価格は、英国政府の補助金を引いたあとで2万5545ポンド(342万円)からに設定されている。

一方でマツダの哲学は、反体制的なものでもある。長い航続距離のために、大きなバッテリーを搭載する、という純EVの主要な流れとは異なる。

結果、MX-30がフロアに搭載するリチウムイオン・バッテリーの容量は、35.5kWhと比較的小さい。そのかわり製造時の環境負荷は小さく、価格を下げ、軽量だから動的性能にもメリットがある。

35.5kWhのバッテリーで199kmの航続距離

航続距離は200kmしかない。マツダは、対象となるドライバーが日常的に走行する条件では、充分な距離だとしている。

この航続距離はコンパクトな純EVと比較しても短い。例えば、イギリス仕様のプジョーe208の場合は339km。同じく日産リーフは312km走れる。航続距離が短いと指摘される、ミニ・エレクトリックですら228km、ホンダeでも218km走れるのだ。

マツダMX-30 e-スカイアクティブ GTスポーツ・テック・プロトタイプ(欧州仕様)
マツダMX-30 e-スカイアクティブ GTスポーツ・テック・プロトタイプ(欧州仕様)

魅力的な価格と動的性能などを備えているとしても、果たして、マツダの哲学をドライバーに理解してもらうことはできるのだろうか。疑問は残る。

MX-30には、マツダの魂動デザインと呼ばれるデザイン言語を、進化させたスタイリングが与えられている。シャープでクリーンな面構成は、内燃エンジンを搭載するクロスオーバーのCX-30などとは明らかに違う。

ルックスはボクシーで、マツダらしい控えめなスタイリングに、スタイリッシュな処理が施されている。ドアは、RX-8のような観音開きだ。

試乗車は、オプションの3トーン塗装が与えられ、一層見た目が際立っていた。エンジンを搭載するかのようにボンネットは長く、純EVらしさは強くない。

車内は、純EV専用アーキテクチャによる、空間的なメリットを享受している。同時に、従来的な構造や操作系も残された。

ダッシュボードの造形はクリーンで、8.8インチのインフォテインメント・システム用モニターを奥の方にレイアウト。エアコン用の7.0インチのタッチモニターが、センターコンソール上にある。

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