【世界3大耐久レースの1つ】マツダ 最後のIMSAセブリング12時間を終えて 選手インタビュー

公開 : 2021.04.03 08:05  更新 : 2022.11.01 08:45

セブリング12時間について、今期でIMSAから撤退するマツダのドライバーとエンジニアに話を聞きました。

2年連続の表彰台獲得

text:Damien Smith(ダミアン・スミス)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

耐久レースというとル・マン24時間が最も有名かもしれないが、IMSAのセブリング12時間も世界で最も過酷なレースの1つであることに間違いはない。AUTOCARは、3月20日に開催の同レースに参戦したマツダチームのドライバーとエンジニアに話を聞いた。

セブリング12時間は、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の重要なラウンドとして今年、米フロリダ州で69回目の開催を迎えた。ル・マン、デイトナ24時間と並ぶ3大耐久レースの1つで、激しいバトルが繰り広げられるカーブレイカーとして知られている。

ハリー・ティンクネル、オリバー・ジャービス、ジョナサン・ボマリート
ハリー・ティンクネル、オリバー・ジャービス、ジョナサン・ボマリート

昨年11月(パンデミックの影響で従来の3月から延期)、ハリー・ティンクネルはマルチマティック社の2.0L 4気筒ターボエンジンを搭載したマツダRT24-Pを駆り、セブリング初優勝を果たした。マツダは今年、IMSAへのエントリーを1台に縮小し、今期限りでの撤退を発表している。最後のセブリング12時間では、2位という結果に終わった。

ティンクネルは、同じ英国人のオリバー・ジャービス、米国人のジョナサン・ボマリートと55号車をシェアし、ピットではリーナ・ゲイドがエンジニアとして采配を振るっている。ジャービスとゲイドは、アウディのLMP1耐久レースで成功を収めたベテランで、2013年にはセブリング12時間レースで共に優勝しており、ゲイドは、ル・マンでも3回の優勝経験がある。

ハリー・ティンクネル、オリバー・ジャービス、そしてエンジニアのリーナ・ゲイドへのインタビューをお届けする。

バンプだらけのタイトなコース

あなた方にとってセブリング12時間はどのような意味を持っていますか?

リーナ・ゲイド(以下、リーナ):最も困難なレースの1つです。わたしが初めて参加したのは2008年のアウディ・スポーツでのことですが、途中でブレーキ交換でストップしてしまい、厳しさを実感しました。優勝したのは、オリー(オリバーのこと)が乗っていた2013年の1回だけです。わたし達のマシンは序盤にダメージを受けて、フロアの前部がサメに食べられたようになり、レース続行が難しくなりました。

オリバー・ジャービス(以下、オリバー):僕のキャリアの中で最大の乱高下が激しかったのは、セブリングでした。2013年にマルセル(フェスラー)とブノワ(トレルイエ)にチームメイトとして加わりましたが、当時は正規メンバーではありませんでした。アウディは僕にもっと経験を積ませたかったようで、僕をいきなり投げ込んだんです。

リーナ・ゲイドは2011年、女性のエンジニアとして初めてル・マン24時間を制覇した(アウディ・スポーツ)
リーナ・ゲイドは2011年、女性のエンジニアとして初めてル・マン24時間を制覇した(アウディ・スポーツ)

それまでハイブリッドカーを運転したことがなく、セブリングの経験もほとんどありませんでした。正直なところ、準備不足で臨み、途中から苦しくなってしまった。そんなとき、リーナを通じてマルセルが無線で「パワーを出して、ハイブリッドでクルマを回すように伝えてくれ」と言ってきたんです。アンダーステアに悩んでいた僕にとっては、まるでスイッチを切り替えられたような感覚でした。1周目から次の周までに、1周あたり1秒も速くなったんです。

そのまま優勝したのですが、リーナが言っていたように、チームメイトの1人がインラップで縁石にぶつかり、フロアを壊してしまいました。でも、僕たちは勝つことができた。あと何回か勝ちたいと思っていたのですが……去年が一番負けから遠かったんですよね。残り28分で20秒の差をつけてリードしていました。でも、フィニッシュラインを越えるまでは勝ったことになりません。(彼の乗っていた77号車はパンクし、ティンクネルの55号車が勝利を収めた)

この6kmのサーキットの特徴は何でしょうか?

オリバー:このサーキットとレースは、僕にとってモータースポーツのすべてです。マシンもドライバーも極限まで追い込まれます。たった12時間ですが、肉体的にも精神的にもセブリングで経験することは、他のサーキットの24時間に匹敵します。

ハリー、昨年の優勝はどんな意味がありましたか?

ハリー・ティンクネル(以下、ハリー):メジャーなレースなので、最高の気分でした。今年の初めにテストのために戻ってきましたが、スターリング・モスやファン・マヌエル・ファンジオのように、優勝者として自分の名前がボードに表示されるのは素晴らしいことです。

あと、バンプも忘れがたいですね。慣れてくると不思議なものです。最初の頃は、1周するごとに今にもコースを飛び出していきそうな感じがしました。第1コーナーには260km/hほどのスピードで進入しますが、出口で230~240km/hほどで走行しているときにバンプに当たると、元のラインから3~4m右に着地してしまうんです。最終の第17コーナーも同様で、非常にバンピーで、出口まで死の壁のようにどこまでも続いて、しかもランオフエリアがない。マシンのタイプによって、6~7種類のラインがあるんです。毎周違いますし、予選のときは特に怖いです。

16コーナーからバックストレートに入り、ダッシュでラップタイムが上がっているのを確認すると、17コーナーに飛び込んでラップを終わらせなないといけない。260~270km/hでコーナーを回ると、遠くにタイヤウォールが見えてくるので、マシンがしっかりグリップしてぶつからないことを祈るしかありません。

リーナ、セブリングではマシンに何を求めますか?

リーナ:レースカレンダーの中でも最もハードなブレーキングを行うコースの1つで、ラップタイムやスティントのパフォーマンスには欠かせません。ブレーキングがうまくいかないだけで、ペースが遅くなってしまいます。レースの大半は、気温が変化する日没以降に行われます。特に全マシンがフィニッシュに向けて全開走行している時は、それによってパフォーマンスやバランスが変化します。それに加えて、バンプもあります。彼らがどうやっているのかは分かりません。もしかしたら、ここ(自分の頭を指す)をノックアウトされて、もうどうでもよくなっているのかも……。

第1コーナーと第17コーナーはエアロダイナミクスが非常に重要なコーナーで、バランスを損なうと、タイヤがグリップを失ってしまいます。また、ブレーキロックも大きな問題です。ターン7は非常に低速ですが、インサイドホイールが激しくロックすることがあり、コントロールできなければ大きなペナルティとなります。

関連テーマ

おすすめ記事