【マッスルカーの絶頂期】シボレー・カマロSS 396とシェルビーGT500 1969年の火花 後編

公開 : 2021.06.19 17:45

フロントヘビーで曖昧なステアリング

もちろん、今回ご登場願ったカマロはL35型の6.5Lエンジンを載せている。1969年のカマロ全体で見ても、6000台ほどしかなかった。ロチェスター社製のクワッドジェット・キャブレターで、圧縮比は10.25:1。最高出力は330psを発揮する。

スペック上では、カマロSS 396とGT500 コブラ・ジェットとの違いはさほど目立たない。しかし、中に乗り込んだ瞬間にその個性は瞭然になる。

シボレー・カマロSS 396 インディ・ペースカー(1967〜1969年)
シボレー・カマロSS 396 インディ・ペースカー(1967〜1969年)

カマロのアクセルペダルを踏み込めば、リアタイヤが陽気にクルマを進めてくれる。だがマスタングで同じことをすると、リムからタイヤ搾り取られそうな勢いがある。明らかにパワー過剰といった感じだ。

コブラ・ジェットが威力を見せつけたのは、ドラッグレースだった。操縦性を評価しようと思うものの、判断できる要素といえば、フルパワーでどれだけまっすぐ進めるかくらい。

ステアリングホイールは、両車ともに曖昧。感覚のない領域が広すぎる。フロントタイヤとは何で結ばれているのだろう、と不思議に思ってしまう。2台ともフロントヘビー。特にカマロはノーズが重く、コーナリングは速度を控えた方が良い。

広大な砂漠にまっすぐに伸びる道を走る。警察に見つかる心配はほぼない。レジェンドと呼べる2台のマッスルカーで、ジリジリと暑い午後を過ごす。ビッグブロックと風になびく髪。これ以上のベストマッチはなかなかない。

フォードとシボレーの夢のマッスルカー

マッスルカーの人気は、1960年代から1970年代に移っても衰えることはなかった。アメリカ人の嗜好の変化へ合わせるように、ハイパワーなストリートマシンから欧州車ライクなグランドツアラーへ、特徴を変化させながら。

それでも徐々に馬力は削られ、車重は増え、マッスルカーに見ていた夢は覚めてしまった。歴代のマッスルカーで、今回のシェルビーGT500 コブラ・ジェットとカマロSS 396に匹敵するほどのドリームマシンは限られる。

青のシェルビーGT500 コブラ・ジェットと白のシボレー・カマロSS 396 インディ・ペースカー
青のシェルビーGT500 コブラ・ジェットと白のシボレー・カマロSS 396 インディ・ペースカー

タイヤを引きちぎらんばかりのパワーと、パワーステアリングやエアコン、アシスト・ブレーキの快適性。当時のように、お互いを強くライバル視するがごとく威勢がいい。

シボレーかフォードか。50年ほど前からアメリカを分断してきた、2つのブランド。どちらに付くか、多くのアメリカ人なら決めているはず。日本人にトヨタ派か日産派かを尋ねるようなものかもしれない。

アメリカの事情を深く知らない英国の部外者として、筆者はカマロSS 396を選ぶだろう。有機的なカーブを描くコークボトル・ラインのボディは見ているだけでうれしい。

それに1969年のマスタングのように、秀作の初代と比較される心配もしなくていい。

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