【リスペクトすべき進化】シボレー・コルベット C8 3LTへ試乗 ミドシップの衝撃 後編

公開 : 2021.10.22 19:05

NA V8エンジンは保ちつつ、ミドシップへと大変身を遂げたC8のコルベット。かつてない秀逸な操縦性を、英国編集部は評価します。

好対照なほど見違えたステアリング

執筆:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
最新のシボレーコルベット C8。インテリアに用いられる素材はリッチで、搭載される技術水準も高い。組み立て品質にも優れている。ダッシュボードや内装パネルは、7万ポンド超え(1064万円)のスポーツカーに相応しい知覚品質がある。

メーターパネルはモニター式。ステレオはハイエンドなもので、シートにはベンチレーション機能が付き、正面にはヘッドアップ・ディスプレイも組み込まれている。すべてが正しいと思える。

シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)
シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)

フロントタイヤの位置は、従来のコルベットより遥かにドライバーに近い。これまでにない違いを生んでいるはずだ。

歴代のコルベットで、高い評価を得ることができなかった部分がステアリング。ステアリングコラムは長く、フロントタイヤに掛かる重量は大きかった。それが走りに表れていた。

しかしC8のコルベットは、好対照といえるほどに見違えた。極めて正確に、直感的に反応する。ステアリングホイールを切った時の重み付けにも、レシオのスピードにも、違和感がない。

フェラーリF8トリブートのように、痛快にダイレクトという程ではない。マクラーレンロータスの油圧パワーステアリングほど、夢見心地のフィーリングというわけでもない。

だが、ギアリングは適正で感触には一貫性があり、コーナリングフォースを線形的に高めていける。ハイスピードでもラインを狙いやすく、速度域を問わずインタラクティブに操舵できる充足感がある。

日常的に運転したいと思える振る舞い

現代のミドシップ・スポーツに準じる躍動感にまで迫れていない理由は、C8のボディサイズと重量が影響している。大きなボディは車線の幅を専有してしまうし、車線変更にも気を使うためだ。

しかし乗り心地はジェントルで、ボディが動く周期も穏やか。コーナーではボディロールが抑制され、波長の長い路面の起伏へ追従するように足が動く。

シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)
シボレー・コルベット C8 3LTクーペ(欧州仕様)

バーゲンプライスのスーパーカーではなく、日常的に運転したいと思える、乗りやすいスポーツカーらしい振る舞いがある。姿勢制御と初期の旋回性には少しダルな面もあるものの、十二分にダイナミック。ドライバーの心へも響いてくる。

シボレーの技術者は、C8のスプリングレートが、C7より遥かに硬いことを教えてくれた。だが、実用性と動的特性とのバランスを図り、多様なシーンに対応するキャラクターを与えたとも説明する。

そのバランス取りは成功したといえる。とても快適で心地良い長距離ランナーにもなってくれるし、継ぎ接ぎだらけの市街地や郊外の道でも、しなやかに走ってくれる。

滑らかで機敏で、落ち着きがある。ドライバーとの一体感も強く、コーナーを流れるように駆け抜ける。乗り心地に優れ、ハンドリングも素晴らしい。

ライバルとするスーパーカーより、シャシーのバランスや落ち着きは高いほど。エネルギッシュだが自然だ。そしてコルベットといえば、エンジン。C8でも、魅力の中心にあるのは6.2LのNA V8エンジンだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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