電動車、浸透してきた? クルマの電動化の歴史といろんな電動車が存在する背景

公開 : 2021.11.11 05:45

本格的な多様化は2010年代から

プリウスはしょせん、キワモノだ」。

そんな表現を、90年代から2000年代前半あたりまで、筆者は欧米自動車メーカー関係者の多くから聞いてきた。

日産リーフ
日産リーフ

ところが、2000年代中盤あたりから世の中の風向きが変わる。

米西海岸で有名俳優やプロスポーツ選手などによる「一人ひとりが環境意識をしっかり持つことは大事」というライフスタイルが世界に向けて紹介されるようになった。

これと並行するように、スマホの普及が広まり、また単なる排ガス規制ではなく地球規模での環境対応がグローバルで社会問題化していく。

こうした社会変化によって、自動車メーカーやベンチャー企業などが、クルマの電動化に本気で取り組むようになり、それぞれが持つ開発技術や知見、そして国や地域の環境政策との兼ね合いなどを踏まえて、さまざまな電動車が並存する時代を迎えた。

それでも、大手メーカーはEVに対して、電池/制御システムのコストの高さ、航続距離の短さ、インフラ整備の不足という、いわゆるEV三重苦を理由に、思い切ったEVシフトを敷かず、結果的にテスラがEV独り勝ちを許すことになる。

大手自動車メーカーとしては、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、そしてFCV(燃料電池車)という電動化の階段を慎重に登るという姿勢を崩さなかった。

電動化時代へ 増える電動車

そうした中、トヨタを筆頭とするハイブリッド車先行企業の特許によって、ハイブリッド車が多様化することが難しいという背景もあった。

一方で、ハイブリッド車よりも「EV寄り」という立ち位置で、外部からの充電や外部への給電が可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)として、プリウスPHV以外には、三菱アウトランダーPHEVが市場をリード。この度、9年ぶりにフルモデルチェンジとなった。

三菱アウトランダーPHEV
三菱アウトランダーPHEV    花村英典

メルセデス・ベンツBMWも2010年代にPHEVモデルを拡充してきたが、ここに来て欧州委員会が政策としてEVシフトを強く打ち出したことで、状況が変化していた。

このほか、BMW i3レンジエクステンダーや、マツダが2022年に発売するロータリーエンジンを発電機として使うMX-30 EVのレンジエクステンダーなど、電池量多めで内燃機関を併用する電動車もある。

一方で、日本を中心にグローバルで注目が集まってきたのが、日産eパワーのような、外部充電/給電機能なしで、搭載バッテリー量が少なくエンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド車だ。

ダイハツも新ロッキーでシリーズハイブリッドを導入する。

世の中を俯瞰すれば、2020年代~2030年代は本格的なEVシフトに向けた転換期だといえるだろう。

そうした中、さまざまな電動車が並存する時期が当分続きそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    上野太朗

    Taro Ueno

    1991年生まれ。親が買ってくれた玩具はミニカー、ゲームはレース系、書籍は自動車関連、週末は父のサーキット走行のタイム計測というエリート・コース(?)を歩む。学生時代はボルボ940→アルファ・スパイダー(916)→トヨタ86→アルファ156→マツダ・ロードスター(NC)→VWゴルフGTIにありったけのお金を溶かす。ある日突然、編集長から「遊びにこない?」の電話。現職に至る。

関連テーマ

おすすめ記事

 

EVの人気画像