一貫性の高い操縦性のヴァンテージ

グリップ力はランボルギーニだけでなく、ポルシェアストン マーティンも、いうまでもなく世界最高水準。サーキットでは見事なまでな操縦性のバランスと、ライン調整のしやすさを両立させていた。

面白いことに、この3台はそれぞれエンジンの搭載位置が異なる。ゆえにドライビング・スタイルも異なるのだが、互いにとても魅力的な体験を与えてくれた。

ランボルギーニ・ウラカン STOとヒュンダイi20 N
ランボルギーニ・ウラカン STOとヒュンダイi20 N

ウラカン STOで感心させられたのが、2014年のウラカン登場以来、驚くほど進化した動的能力。エンジニアの努力の積み重ねに違いない。

ヴァンテージ F1エディションも、アストン マーティンが施した特別仕様のシャシー・チューニングによって、素晴らしいドライバーズカーへと高められている。質量を見事に制御し、一貫性の高い操縦性を獲得。パワースライドも完璧といえるほど自在だ。

だが、ランボルギーニもアストン マーティンも、ポルシェ911 GT3の備える完全性には迫れなかったことも事実。ポルシェのドリフトアングルを問わないコーナリング、眼を見張るほどのクリップ力、正確で濃密なステアリングを超えてはいない。

ディスデイルは、「仰天するほど卓越しています。燃料タンクが空になるまで、サーキットを走っていたいと思わせます」。と表現。プライヤーは実際にガソリンが尽きるまで走り込み、「楽しく繊細で、愛おしい」。と笑顔で降りてきた。

AUTOCARを定期的にお読みいただいている方なら、911 GT3が2021年のBBDCトップ3にランクインしても驚かないだろう。評価の高さはいつものことだ。

忘れられない体験のミニ・リマスタード

クラシカルな見た目の、デビッド・ブラウン・ミニ・リマスタード・オセリ・エディションも、2021年のノミネート車両に選ばれた。レストモッド・モデルがBBDCに参加したことは過去になかったが、メーカーは初事例として快くクルマを提供してくれた。

小さなミニを1度運転すれば、忘れられない体験になる。エンジンはAシリーズと呼ばれるユニットで、ツインキャブレターの1450cc。空気の吸入と4本のシリンダーの燃焼が、素晴らしいサウンドを放つ。回転数は関係ない。

ケータハム・セブン 170Rとデビッド・ブラウン・ミニ・リマスタード・オセリ・エディション
ケータハム・セブン 170Rとデビッド・ブラウン・ミニ・リマスタード・オセリ・エディション

非常に個性的でもある。アイドリングは荒っぽいし、シフトフィールは曖昧。操縦性は、オリジナル・ミニのベストとはいえない。路面の起伏やワダチに敏感で、意図した位置を走らせ続けることも難しい。

コーナーでは、ボディロールに伴うオーバーステアも生じる。右旋回より、左旋回の方が顕著だった。ディスデイルは、「このミニをもっと好きになりたかった」。とつぶやいた。デビッド・ブラウンのチューニングには、まだ余地がありそうだ。

「路上での限界領域は、危険にすら感じました。左コーナーでは驚くほどテールが動きます。でも、右コーナーでは安定している。出口目掛けてパワーをかけて、オーバーステアに持ち込めるほど」

BBDCでの得点は伸び悩んだが、パワーやグリップが向上していたことは事実。クラシカルなミニの操縦性が現代化され、サーキットを許容できる能力を獲得している。

果たして上位3台に選ばれ、最終決戦に進むモデルは? この続きは(4)にて、経験豊かなフランケルにまとめていただこう。

記事に関わった人々

  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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