BMW i4 詳細データテスト 傑作EV 4シリーズ譲りのハンドリング おすすめは下位グレード

公開 : 2022.01.29 20:25

走り ★★★★★★★★☆☆

EVの爆発的な加速にも、最近ではすっかり慣れてしまった。それでもi4 M50のそれには、思わず息を呑む。スロットルペダルを深く踏み込めば、いついかなるときでも驚きを覚えるはずだ。

数字的に見ても、その加速性能はみごとなものだ。0−97km/hのタイムは、湿った路面でも4.1秒をマークした。64−97km/hについては1.5秒で、これはランボルギーニアヴェンタドールSVJのコンマ2秒落ちにすぎない。

スーパーカーに迫る加速性能を秘めるi4 M50だが、日常使いしやすい穏やかな走りも難なくこなす。回生ブレーキを用いた1ペダル運転もできるが、緊急ブレーキ性能にはやや不満が残る。
スーパーカーに迫る加速性能を秘めるi4 M50だが、日常使いしやすい穏やかな走りも難なくこなす。回生ブレーキを用いた1ペダル運転もできるが、緊急ブレーキ性能にはやや不満が残る。    LUC LACEY

しかし、数字以上に印象的なのが、パフォーマンスの特性だ。とくに、中回転域でそれが顕著となる。1万7000rpm回るモーターのレスポンスは瞬間的と言ってもいいもので、さらにスポーツブースト機能を使うと、544ps/81.0kg-mを最大10秒間フルに引き出せる。

パワートレインを全開にすると、リアが一瞬震え、フロントタイヤがホイールスピンするが、かなりの早さと巧みさでトラクションコントロールが抑え込み、猛然と前方へ突き進んでゆく。いま手に入る本格スーパーカーすべてと同じように、このクルマのポテンシャルをフルに試すなら、冴えた頭脳と時と場合をわきまえた判断力が必要だ。

当然ながら、加速時には内燃エンジンのようなリアルな機械音が発生しない。カムの唸りや吸気の叫び、エグゾーストの方向に代わるのが、映画音楽の大家であるハンス・ジマーの力を借りて作り上げた合成音だ。しかし、テスター陣の感想は、このサイバーなサウンドには深みがないというもの。また、かなりのスピードが出ていながら、音が盛り上がらないというのは、やる気が削がれるところもある。それはいまだ克服されていない、速いEVの弱点だ。

当然ながら、i4 M50のパフォーマンスは猛烈な側面だけではない。楽に走れるペースや正確さこそ、もっとも説得力のある性質だろう。加速はリニアでレスポンスに優れ、2点間移動をゆったり直感的に行おうとする限りは、穏やかすぎるかもしれない。

いつでもワープするようなスピードでのオーバーテイクを可能にするパフォーマンスを引き出せるが、パワートレインのストレートで、地味に力強いドライバビリティこそが、このクルマを日常使いしやすいものにしている要因だ。とはいうものの、その点でいえば、340psのi4 eドライブ40でもほぼ同じことができる。

ブレーキングについては、おおむね机上論でセッティングされている。BMWの考えは、アダプティブ回生ブレーキのプログラムによって、制動の90%は摩擦ブレーキなしに済ませるというもの。たしかに、日頃の運転がほぼブレーキを踏まずに終わるだろうことは、われわれが保証する。

ところが、緊急ブレーキについては、満足できるとはいいがたい。113km/hからの完全停止には61.4mを要し、レーンからにじり出てしまった。同じ日に同じコンディションでテストしたタイカンは、矢のようにまっすぐな軌跡で速度を落とし、54mジャストでストップした。

この違いは、タイヤによるところが大きそうだ。BMWはピレリPゼロ・エレクトを履かせていたが、ポルシェミシュラン・パイロットスポーツ4を装着していた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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