6速セミATに33psモーター採用 スズキ・ビターラ(エスクード) 1.5フル・ハイブリッドへ英国試乗 

公開 : 2022.03.26 08:25

日本ではエスクードを名乗っていたSUVの、フル・ハイブリッド版が欧州へ上陸。英国編集部が評価しました。

NA 1.5L 4気筒にベルト駆動のモーター

各メーカーのモデルは純EV化が進みつつあり、スケートボード構造と呼ばれるプラットフォームの採用で、メカニズム的な均質化が止まらない。古くからの自動車エンジニアが腕をふるえる場面として、ハイブリッドは貴重な領域なのかもしれない。

トヨタのプラネタリーギアや、ホンダのツインモーター・シリーズ式、ルノーの4速トランスミッションに一体化されたものなど、ハイブリッドには多様な構造が存在している。そこへ、スズキはビターラ(エスクード)用として、別の1種類を提案してきた。

スズキ・ビターラ(エスクード) 1.5フル・ハイブリッド SZ5(欧州仕様)
スズキ・ビターラ(エスクード) 1.5フル・ハイブリッド SZ5(欧州仕様)

スズキは欧州で、トヨタ・カローラツーリングのOEMモデル、スウェイスというステーションワゴンを販売している。このビターラは、同社ではフル・ハイブリッド・モデルの2台目になる。

ただし、今回のハイブリッドは自社製。スズキのモデルの多くには、自社開発のマイルド・ハイブリッドがラインナップされているが、非常に効率的にクルマを走らせる。だが、ビターラの1.5フル・ハイブリッドは、若干詰めが甘いようだ。

採用されたエンジンは、優れた1.4Lターボではなく、1.5Lの4気筒自然吸気。最高出力は115psを発揮する。これに33psを発揮する駆動用モーターが、ベルト駆動で組み合わされる。フル・ハイブリッドを名乗るシステムとしては、かなり非力なモーターといえる。

もたつく6速セミATと小さいバッテリー

ビターラの駆動用モーターは、エンジンが最高出力を発生する高回転域では機能を止める。基本的には低回転域でのアシストが中心で、実際にはマイルド・ハイブリッドに近い。駆動用バッテリーの容量も、0.84kWhしかない。

トランスミッションは、6速セミATの一択。トップグレードのSZ5では、オプションで四輪駆動を選択できる。

スズキ・ビターラ(エスクード) 1.5フル・ハイブリッド SZ5(欧州仕様)
スズキ・ビターラ(エスクード) 1.5フル・ハイブリッド SZ5(欧州仕様)

セミATは、クラッチとシフトレバーの動作をアクチュエーターで賄うMTで、最近は殆ど見なくなった技術だ。以前はスーパーカーにも採用されていたが、高速時以外の変速が苦手なことから、デュアルクラッチATなどへ置き換わっている。

この技術を復活させる必要はあったのだろうか。確かに低速域では、セミATがクラッチを切り変速をこなしている間、駆動用モーターがパワーをアシストするため、スムーズに走れる。それでも、フルスロットル時の変速は驚くほど遅い。

右折時や車線への合流など、ほぼ停まった状態から短時間に加速を終えたい場合も、もたついていた。一般的なATの方が好ましい。

また駆動用バッテリーが小さく、エンジンを止めた状態で走れる距離も限定的。市街地を流している程度でも、アクセルペダルを僅かに倒すだけで、エンジンが始動してしまう。エコ・モードを選ぶと改善するものの、走行できる距離が伸びるわけではない。

小さなバッテリーのメリットを挙げるとすれば、車内空間が侵食されないことと、車重増を抑えられること。実際、ハンドリングに影響は見られなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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