メルセデス・ベンツCクラス 詳細データテスト 競合車を引き離すEV航続距離 強みは走りより洗練性

公開 : 2022.05.14 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

C300eは根っからのスポーツセダンではないし、走り志向のドライバーが進んで選ぶクルマでもない。だが、ハンドリングは上々だ。明らかにソフトなセッティングのサスペンションに予想するよりも、実際はずっといい。

すべりやすく過酷なコンディションでも、十分に引き締まったボディコントロールと、文句ないバランスのグリップレベルを示してくれる。かなり飛ばせるし、おもしろみのあるドライビングスタイルをキープできる。そして、車両重量に起因する、あらゆる好ましくないインパクトを食い止めてくれるのだ。

ゆったりとした、洗練された走りが持ち味のC300eだが、いざ飛ばすとやる気のある相棒といった一面も見せる。コーナーでは、華々しさには欠けるが、安定性と精確さ、トラクションを見せつける。
ゆったりとした、洗練された走りが持ち味のC300eだが、いざ飛ばすとやる気のある相棒といった一面も見せる。コーナーでは、華々しさには欠けるが、安定性と精確さ、トラクションを見せつける。    LUC LACEY

向きを変える動きは、急激ではなくプログレッシブ。タイトめのコーナーでは、ハンドリングのアジャスト性があるところをほのめかすが、56.1kg-mものトルクがある後輪駆動セダンにそれがなかったらむしろおかしい。もっとも、完全に後輪駆動らしいハンドリング全開、というわけではないのだが。

それでも、望めば十分以上に高いレベルのグリップやハンドリングの精確さ、長距離を走らせるに足る落ち着いた挙動などを発揮し、元気よく走らせるのもイージー。これはおそらく、メーカーの狙いどおりの仕上がりなのだろう。

シャシーのチューンは非常にしなやかで、
常にややコンフォート寄りだと感じられる。とはいえ、山間道路のようなところを走っても、浮き上がりや過剰なロールが発生する手前で踏みとどまり、ピッチもみごとに抑え続ける。ハードにコーナリングすれば多少のロールは出るが、グリップレベルの安定性に影響を与えるほどでも、スタビリティコントロールが邪魔なくらいに介入するほどでもない。

グリップの限界域では、まず前輪がワイドに流れるが、リアはバッテリーの重さが効いて、おそらくこうあってほしいと思うような動きになる。

平坦ではない道を飛ばした際の、上下方向のボディコントロールは良好だ。減衰が効いていて、混乱に陥ることにはまずなりそうもない。ステアリングはとても軽く、フィルターを通したようなフィールで、運転に役立つような類の鮮明なフィードバックはやや不足気味だ。同じことは、ブレーキペダルのチューニングにも当てはまる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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