ドライバーを喜ばせる天才 フォード・フォーカス STへ試乗 2.3L 4気筒ターボで280ps 後編

公開 : 2022.07.26 08:26

フェイスリフトで内外がリフレッシュされたフォーカス ST。熟成されたホットハッチの英国評価はいかに?

2.3L 4気筒ターボで280psと42.7kg-m

モデル中期となるフェイスリフトを受けた、フォードホットハッチ、フォーカス ST。

シャシー側では、トルクベクタリング機能付きのリミテッドスリップ・デフを標準装備する。アダプティブ・ダンパーと、トラック(サーキット)・モード付きのドライビングモードを装備するには、800ポンド(約13万円)の追加予算が必要となる。

フォード・フォーカス ST オートマチック(英国仕様)
フォード・フォーカス ST オートマチック(英国仕様)

エンジンは、280psを発揮する2.3L 4気筒ターボガソリンで、今回は特に変更を受けていない。とはいえ、最大トルクは42.7kg-mと相変わらず太く、レスポンスも鋭い。

エンジンにはサウンドを共鳴させるエンハンサーが付いており、艷やかな響きを楽しめる。車内のスピーカーを介して、ドライバーへ電子的に直接届けてもくれる。スポーツ・モードを選ぶと、そのボリュームも大きくなる。

もはや5気筒エンジンの特徴的なサウンドではないし、人為的なものでもある。それでも4気筒ターボとしては、聴き応えのある音響であることは確かだ。

5000rpmを超えると、若干回転上昇の勢いに陰りが出てくる。より扱いやすい手前の回転域で病みつきになるようなパワーの高まりがあるから、そこまで回す頻度は少ないかもしれない。

2022年の英国の一般道では、まったく不満のない加速力を引き出せる。むしろ、有り余るほど。

多くのライバルを凌駕する運転の楽しさ

フォーカス STは、未だに6速MTが標準装備される、ピュアなホットハッチ。トルクコンバーター式の7速ATもオプションで選択できるが、こちらは競合のデュアルクラッチATほど、日常的な使い勝手と走りの興奮を両立させているとはいえないようだ。

Dに入れたまま、充分素早く駆け回ることができる。だが、積極的に運転している状況では、段数が多すぎる印象が拭えない。特にドライバーがシフトパドルを弾いて、自らギアを選んでいる場面では。

フォード・フォーカス ST オートマチック(英国仕様)
フォード・フォーカス ST オートマチック(英国仕様)

変速自体もクイックとまでは呼べないし、ドライバーズカーとして、フィーリングも勢いに欠ける。低速域では変速をためらうこともあるようで、自分がクルマを操っているという感覚を少し薄めているようだった。やはり、フォーカス STにはマニュアルだ。

その7速ATの印象を除き、動的能力が与えてくれるドライビング体験の輝きは、従来と変わらない。ステアリングホイールの重みづけやレシオ設定は絶妙で、操縦性は機敏でバランスも素晴らしい。高速域での姿勢制御にも、まったく不満は感じられない。

プレミアム・ブランドのホットハッチより手頃でありながら、走りの魅力は濃密。そして、その楽しさは多くのライバルを凌駕する。

手首を軽快に動かし、タイミングよくペダルを踏み込むことで、普段のカーブがエンターテイメントになる。直感的に、爽快に駆け抜けられる。

コーナリング時のグリップレベルは高く、ヘアピンカーブからの立ち上がりは確実なトラクションが支えてくれる。秀でた動力性能と、懐の深いシャシーが見事に融合している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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