日産アリア 詳細データテスト 広く高品質な室内 直観的な動力系 足回りは乗り心地も操縦性も難あり

公開 : 2022.11.05 20:25  更新 : 2022.12.02 02:31

結論 ★★★★★★★☆☆☆

拡大を続けるファミリー向けEV市場には、アメリカ車や欧州車、韓国車といった選択肢がすでに存在しているものの、ここに新たな日本車を加えて、ようやく候補の出揃った感がある。

日産アリアは、そうした新しさのあるものになろうとかなりがんばったことを感じさせるクルマだ。大胆でこれまでなかったようなルックス、うまいパッケージングと室内の広さ、じつに魅力的で驚くほどの高級感、そしてなんといっても、衝撃的に洗練され直観的な走りを備えている。

結論:驚くほどトラディッショナルでラグジュアリー。しかし、すべてがうまくいっているわけではない。
結論:驚くほどトラディッショナルでラグジュアリー。しかし、すべてがうまくいっているわけではない。    LUC LACEY

よくできた室内装備や、大容量バッテリーによる長い航続距離も、このクルマの魅力向上に寄与する。それだけに、シャシー設計とサスペンションチューニングの出来が満足しかねるものだったのは残念でならない。少なくとも、英国の公道では不満なケースが多かった。

郊外に出ると、緊密なボディコントロールがしばしば乗員を苛む。ドライビングが楽しめるわけではないことは、このクルマの目指すところを考えると大目に見ていいと思える。けれども、もっと価格の低い競合モデルより乗り心地が劣るというのは問題だ。ましてやアリアは、リラックスできて上質な、革新的ファミリーカーを標榜しているのだから、きわめて大きな手落ちだと言わざるを得ない。

担当テスターのアドバイス

リチャード・レーン

キャビンは、アンビエントライトがいい感じだが、前席フットウェルのパネルは足が当たると震える。基本的なクオリティレベルをおろそかにして、表面的なリッチさを追求するというのはいかがなものか。

マット・ソーンダース

バックするとき、1970年代の冷戦時代を描いた映画に出てくる原子力潜水艦の操縦室みたいな音がする。聞けば聞くほど、それが気に入ってしまった。

オプション追加のアドバイス

87kWhアドヴァンス仕様を選び、1750ポンド(約29.8万円)のボーズ・テクノロジーパックを追加したい。電動センターコンソールは装備されないが、それ以上の価値が得られる。20インチホイールとレザーシートが付くスポーツパックは、検討の必要なし。

改善してほしいポイント

・欧州仕様というサスペンションチューニングは再検討の余地あり。ソワソワした動きを消すために、もっとソフトなセッティングにしてもいいのではないか。
・フロントシートのクッションを、長さ調整式にしてほしい。
・もっとダイナミックなハンドリングを、という声には応えなくてもいい。コンフォートという言葉は、それがうまくいけばネガティブワードではないのだから。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

日産 アリアの人気画像