日産アリア 詳細データテスト 広く高品質な室内 直観的な動力系 足回りは乗り心地も操縦性も難あり

公開 : 2022.11.05 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆

パワートレインのチューニングのような直観性をハンドリングにも求めると、二、三の問題が出てくる。このクルマ、ホイールベースが長くドライビングポジションが高いので、常に車体のサイズを意識させられるものの、スムースな路面を低速で走っていれば、位置決めも取り回しも文句なく楽にできる。

ところが、平坦ではないワインディングロードへ入ると、日産が目指したような安定した落ち着きやゆったりした走りを得るのに苦労する。最悪の場合、平均して路面のいい英国の高速道路においてもそうなるのだ。

ハンドリングは、パワートレインほどには直観的ではない。バッテリーによる低重心化と、ロール軸や座面高のバランスが取れていないことが、その要因だろう。
ハンドリングは、パワートレインほどには直観的ではない。バッテリーによる低重心化と、ロール軸や座面高のバランスが取れていないことが、その要因だろう。    LUC LACEY

このクルマの走りにおける一番の問題は、その基本設計に起因するものだ。競合するEVも少なからずそれには取り組んできたが、いまだ解決に近づいた例はみられない。

床下の駆動バッテリーは低重心化をもたらすがゆえに、日産がダイナミックなハンドリングに主眼を置いたであろうことは疑いの余地がない。しかし、重心がロール軸に近づきすぎたのは、いささか問題がある。横方向のロールが出ると、その動きがシャープになってしまうのだ。それはサスペンションが容易くコントロールできるものではない。

そのいっぽうで、高さのあるキャビンはドライバーのヒップポイントを引き上げる。ほかのクルマよりも、ロール軸から上へと離れてしまうのだ。それゆえ、乗員はボディのあらゆる挙動にさらされる。いうなれば、二階建てバスを二階で運転しているようなものだ。いささか大袈裟なたとえではあるが。

それゆえ、コーナーではシンプルなロールではなく、やや不意に外輪側へ傾くような動きが感じられる。ロールが大きいわけではないが、少しの動きでもすべて体感させられてしまうのだ。

ステアリングは、ロックトゥロックが2.5回転と、まあまあクイックで、ロングホイールベースのシャシーを操っていると思えないことがままある。手応えはかなり軽く、フィーリングはフィルターを通したようだ。一貫していて、ちょっとばかり魅力に欠けるが、慣れるのはたやすい。

運転すると、前後アクスルとは隔絶された感覚を味わうことになる。日常使いしている限り、95%くらいの状況では問題がない。きちんと正確かつ安定して操縦し、グリップが一貫しているうちは。

ところが、少しプッシュしてペースを上げると、大きく、重く、スプリングがソフトな、強い刺激のない前輪駆動車だと感じられるようになってくる。

電子制御システムは、コーナリング中に雑なスロットル操作をしても、出力の制御をまったく行わない。テスラモデル3ポールスター2などとは、その点が異なる。弱アンダーステアだがグリップ限界域でも穏やかなので、安定感は維持されるが、よりスポーティ志向のEVに期待するほどには賢いトルクベクタリングを行ってくれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事