セアト850 xグルメット・インディアナ ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(3)

公開 : 2022.12.30 15:05

アルゼンチンが優勝した2022年のワールドカップ。英国編集部では、過去にW杯で勝利を掴んだ8か国のクラシックを比較しました。

スペイン:セアト850

W杯優勝:2010年

フィアットのリアエンジン・コンパクトカーをライセンス生産することで、1950年代に創業したスペインのセアト。現在はフォルクスワーゲン傘下にある、欧州では名の通った自動車メーカーだ。

その最初期に作られた800の後継モデル、850は、1966年から1974年までに66万台以上がラインオフしている。ちなみに、その後のセアト133はフィアットのエンブレムを付け欧州で売られていた時期もあった。

アイボリーのフィアット(セアト)850と、グリーンのヴォグゾール・ビバ HCエステート(グルメット・インディアナ)
アイボリーのフィアット(セアト)850と、グリーンのヴォグゾール・ビバ HCエステート(グルメット・インディアナ)

今回ご登場願った850はイタリアからの代役。英国ではセアトを探し出すことができなかった。だが、ピッチ上の誰も気が付くことはないだろう。標準的なサルーン、ベルリーナの場合、セアト850はフィアット850と瓜二つの双子のような存在だった。

ただし、フィアット版は冴えない樹脂製ステアリングホイールだったが、セアト850はフェイクウッドで少しだけ上品。英国では、1972年から1974年に販売されている。

基本的にはカーデザイナーのダンテ・ジャコーザ氏が手掛けた、1964年のフィアット600の派生版。意欲的に走り込むフォワードではなくキーパー向きといえ、リアアスクルの後ろに載ったエンジンは4気筒843ccと控えめ。最高出力は34psでしかない。

ホイールは12インチと小さく、ブレーキは前後ともドラム。この内容で、最高速度は125km/hを出せた。

リア・サスペンションは600譲りのセミトレーリングアーム式にコイル。フロントはウィッシュボーン式で、横置きのリーフスプリングが支えた。燃料タンクはリアシート直後に搭載されている。

キビキビと動く軽く小さなボディ

スペイン代表とするなら、13インチ・ホイールにフロント・ディスクブレーキ、903ccエンジンを組み合わせた850 スポーツクーペの方が適任という意見は正しいだろう。51psで145km/hの最高速度に届いたのだから。

だとしても、魅力度でいえば850 ベルリーナの方が上だと思う。ドアを開く前から、思わず笑顔になる。ボール1つで楽しめるサッカーのような、純粋さと簡素さがある。

フィアット(セアト)850(1966〜1974年/欧州仕様)
フィアット(セアト)850(1966〜1974年/欧州仕様)

薄いパッドが張られたダッシュボードは、横に長いスピードメーターと、ライトとワイパーのスイッチだけという潔さ。余計な装飾は一切ない。

今回ご登場願った850には社外品のマフラーが付いていて、エグゾーストノートはかなり賑やかだった。筆者の記憶では、オリジナルでは穏なはず。

シフトレバーにクラッチ、アクセルペダルは軽く滑らかに動く。小さなエンジンは、熱意を持って目覚める。速く回ることを好むようだ。

フロントタイヤはステアリングホイールの操作へ繊細に反応し、手のひらへ明確な情報が伝わってくる。だが、幅155と細身のタイヤはグリップ力が限られる。コーナーでは比較的低い速度からアンダーステアに転じ、すぐにセンターラインを超えてしまう。

軽く小さなボディは、スペイン代表選手のようにキビキビと動く。BMCミニ・クーパーSといい勝負を繰り広げるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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