タイヤ3本でも幸せなモーガン・スーパー3 素晴らしいFRクーペのBMW M240i BBDC 2022(2)

公開 : 2022.12.30 13:45

今年1番運転の楽しいクルマは? BBDC 2022(1) 公道とサーキットで11台を乗り比べ

3本のタイヤが生む幸せなドライビング体験

34回目となる、BBDC選手権。同点タイで2台が最下位となったが、それも恥ずべき結果ではない。ノミネート車両の選定に不備があったかな、と思わせるモデルが紛れ込む年が稀にある。しかし、2022年の11台はすべて精鋭だったといっていい。

モーガンは、BBDC選手権にしばしばノミネートされるメーカーだ。過去にはエアロ8と、先代のスリーホイラーが得点争いに加わっている。どちらも、上位に食い込むことはなかったけれど。

左からRMLショートホイールベース、モーガン・スーパー3、マセラティMC20
左からRMLショートホイールベース、モーガン・スーパー3、マセラティMC20

エアロ8は、ライバルに伍せるだけの内容ではなかった。スリーホイラーは、惜しくもサスペンションに不具合をきたし、審査へ進む前にリタイアとなった。

新しいスーパー3は、3本のタイヤで幸せなドライビング体験を味わわせてくれた。得点は伸び悩み最下位になってしまったが、順位ではお伝えできいない喜びがあった。

すべての審査員が、公道でスーパー3を好きになった。個性的な見た目だし、挙動もそれ以外のクルマとは異なる。だが、ボディ剛性は高く製造品質も素晴らしい。大手の自動車メーカーが開発したモデルのような、完成度を備えている。

マット・ソーンダースは、「より秀でた動力性能と引き換えに、若干魅力が薄まったようですね」。と話しつつ、「悪いトレードオフではないようです」。と付け加えた。

彼は、スーパー3は一般道に最適化されていると続けたが、マット・プライヤーも同意する。「開発レベルはかなり高いようです。若干の弱点はあるものの、気にするほどではありません。楽しくて、ずっと笑いながら運転していました」

1950年代のレーシングカーのよう

スーパー3がサーキットでも楽しいかとなると、話は別。低い順位に沈んだ理由でもある。もっとも、多くの人が想像するであろう、横転する危険性はまったく感じられなかった。リアタイヤが、どんなに振り回してもグリップを失わないのだ。

フォード由来となる自然吸気の1.5L 3気筒エンジンは、とても活気がある。サウンドも良いし、気持ちよく吹け上がる。しかし、コーナーでパワーを掛けていくと、フロントノーズは徐々に外側へ流れてしまう。

モーガン・スーパー3(英国仕様)
モーガン・スーパー3(英国仕様)

アクセルペダルでのライン調整も、充分にはできない。ステアリングのレシオは低く、アンダーステアをリカバリーする操舵を当てるのも、かなり慌てた動作になってしまう。

スーパー3にとって、サーキットは場違いな環境だといえる。郊外のパブまでドライブを楽しめる選手権だとしたら、3輪のモーガンが優勝していたかもしれない。

実際、スーパー3の魅力は初日の帰り道でジェームス・ディスデイルを魅了した。「ホテルへ戻る道すがら、スーパー3は輝いていました。他とは異なるモデルを運転するという、特別さを純粋に堪能できます」

「1950年代のレーシングカーのように、腕をボディの外に出して、歯を食いしばってステアリングホイールを握る。そうすれば、運転が楽しくて笑顔が止まりません。細部まで精巧に仕上げられており、情熱的なプロジェクトの見事な成果ですね」

記事に関わった人々

  • アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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