マクラーレン・オートモーティブ新CEO、その視線の先にあるのは? スーパースポーツカービジネスの進む道

公開 : 2023.04.28 07:25

マクラーレンの新CEO、マイケル・ライターズ氏にインタビューする機会を得ました。将来のモデル構成、デザインのこと。お考えを伺って来ました。

マイケル・ライターズCEOのキャリア

2022年7月にマクラーレン・オートモーティブのCEOに就任したマイケル・ライターズは、大学卒業後、エンジニアリング会社を経てポルシェに入社。

ここでカイエンの開発などに携わった後、2014年にフェラーリに移籍し、チーフテクニカルオフィサーとしてローマ、SF90、296GTB、プロサングエなどを生み出してきた。いわば、技術畑出身の経営者である。

英マクラーレン・オートモーティブのマイケル・ライターズCEO
英マクラーレン・オートモーティブのマイケル・ライターズCEO    マクラーレン・オートモーティブ

それにしても、フェラーリから同じスーパースポーツカーブランドであるマクラーレンに移籍するとは、なかなかエポックメイキングなキャリアである。最初に現職をオファーされたときは、どんな気持ちだったのろうか?

「ナイス!と思いました(笑)」

とはいえ、フェラーリで重責を担っていただけに、最終的に決断するまでにはそれなりの時間もかかったようだ。

「複雑な状況でした。私の都合だけでなく、(もともと働いていた)会社の都合もあります。そこで、様々な議論を重ねたうえで、最終的な結論を下すことにしました」

たとえスポーツカーの開発で長年の経験があっても、ひとつの自動車メーカーを切り盛りするうえでは様々な知識や経験が必要になるはず。技術者が自動車メーカーのCEOになることには、どのような困難が伴うのだろうか?

「私は、技術者と自動車メーカーのCEOは完璧なコンビネーションだと思っています」とライターズ。「それに私は製品のエンジニアであっただけでなく、購買や生産計画などの部門で会社の運営にも関わってきました。したがって、いまは自宅にいるような(寛いだ)気分ですし、会社を運営していく自信もあります」

“明確な”モデルラインの重要性

では、具体的にライターズはマクラーレンをどう舵取りしていくつもりなのか?

「まず、製品のラインナップを改善するつもりです。私は、ひとつひとつのモデルに明確な目的があるべきだと考えています。『なぜ、自分はこのモデルを買うのか?』ということを、顧客が明確に理解できるようにすることが必要です。そして、テクノロジーによる明確なヒエラルキーの構築を進めます。私は、アルトゥーラは大きな可能性を秘めていると考えています。なぜなら、(マクラーレン・オートモーティブにとってこれが)V8エンジンを積んでいない初めてのモデルであり、V6エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせているからです。こういったテクノロジーに関して、モデルごとに明確な位置づけを行なうことが重要です」

今後のラインナップについて、テクノロジーによってモデル間のヒエラルキーを形作っていくと語るライターズCEO
今後のラインナップについて、テクノロジーによってモデル間のヒエラルキーを形作っていくと語るライターズCEO    マクラーレン・オートモーティブ

続いてライターズは製品のデザインについて触れた。

「今後は、マクラーレン・ファミリーの一員であるとの印象を失わせることなく、それぞれの個性をより明確にすることが大切です。それと同時に、ここでも顧客を納得させられるヒエラルキーを構築する必要があります。『なぜ、私は20万ポンドでも買えるクルマのために200万ポンドを支払わなければいけないのか?』 こういった疑問に対して、われわれ自身がお客さまに明確に説明できるようになることが重要です」

ちなみにマクラーレンのチーフデザイナーは昨年7月に交代。GTなどのデザインに関わったゴラン・オズボルトが就任し、今年8月までその役を務める。

「したがって、デザインの変化は、私が着任する以前から自然に起きていたといえます」

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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