Bクラスに「好感」を持てるワケ 改良新型B 200 dで見つけた、小さなメルセデス・ベンツの勘所

公開 : 2023.05.02 20:25

マイナーチェンジ版「Bクラス」のディーゼル車をレポート。ギラギラしすぎないメルセデスは、改良でどんなクルマになったのでしょう。

Aクラスとどのくらいサイズが違う?

車名からすれば“Aクラスの上級設定車”のようにも取れるが、Aクラス、Bクラスは方向性が異なる同車格モデルと考えていい。もっと簡単に言えば、セダンとワゴンの違いのようなものだ。

全長は、AクラスHB(ハッチバック)よりも10mm短い4430mm。全幅は5mm狭まるが、平面寸法はほとんど同じである。

改良新型メルセデス・ベンツB 200 d(パタゴニアレッド)。「AMGライン」仕様ではマットクロームのスリーポインテッド・スターを無数に散りばめた「スターパターングリル」となった。
改良新型メルセデス・ベンツB 200 d(パタゴニアレッド)。「AMGライン」仕様ではマットクロームのスリーポインテッド・スターを無数に散りばめた「スターパターングリル」となった。    宮澤佳久

両車の車両寸法の主な差異は全高であり、Bクラスは130mm高い。カタログ値では最低地上高が10mm異なるが、ボンネット高やベルトライン高もほぼ同じで、“屋根を13cmほど高めたAクラスHB”が「Bクラス」と考えていい。

何のためか? 言うまでもなく「キャビンスペースの拡大」である。

4.4m強の全長、2.7m強のホイールベースと5.0mの最小回転半径にこだわらなければ、同等以上のキャビンスペースを持つクルマもある。しかし、タウンユースに使いやすいサイズを維持して、ファーストカー用途に十分なキャビン実用性を求めたところがBクラスの存在意義と言える。

現在の日本向けBクラスは、1.3Lターボ搭載の「B 180」、2Lディーゼルの「B 200 d」の2モデルで、いずれも駆動方式はFWDのみ。

試乗したのは、パワートレイン設定では上位に位置する「B 200 d」だ。

頭上だけじゃない、匠なパッケージ

ホイールベースも、キャビン長も、AクラスHBと同じ。当然、室内有効長も計測誤差の範囲。

Bクラスの室内のゆとりは室内高がもたらすヘッドルームだけかというと、そうではない。

改良新型メルセデス・ベンツB 200 dの前席(内装色:クラシックレッド/ブラック本革)
改良新型メルセデス・ベンツB 200 dの前席(内装色:クラシックレッド/ブラック本革)    宮澤佳久

前席は座面高を高く、アップライトな着座姿勢が取りやすく、その分だけシートスライド位置は前方になり、それは後席のレッグスペースの拡大に繋がる。

もちろん、シートリフターを用いたりすればAクラスでも同様な着座姿勢を採れるが、ヘッドルームが減少し、寸法的にも視角的にも圧迫感が強く、アンバランスな印象を受けてしまう。

アップライトなポジションに上下開口の広いウインドウグラフィック。高いアイポイントと広々ウインドウは開放感や見晴らしを高める。

さらには前席バックレスト上の空間も多少ながら拡がるので前・後席の空間の共有感も高まり、コミュニケーションも取りやすい。

4名乗車で和気藹々としたドライブが「狙い」なのがよく分かるキャビン設計だ。

荷室もチェック 車重1.6tの味

荷室の平面寸法は、見た目ではAクラスHBと大差ない。後席バックレスト高で制限した荷室高も同等。

とは言え、荷室奥行きも荷室高もコンパクトカーではトップレベル。

Bクラスの荷室(イリジウムシルバー)。改良新型の外装色は、新色のローズゴールドも選べるようになった。
Bクラスの荷室(イリジウムシルバー)。改良新型の外装色は、新色のローズゴールドも選べるようになった。

さらに後席収納で高い天井を活かせば大物積みにも対応できる。掃き出し段差なしの積み降ろししやすい床面ボード設定や、凹凸の少ない荷室形状など積載性でも優等生だ。

「B 200 d」の車重はフル装備ならほぼ1.6t。全長4.5m弱のカローラ・ツーリング(ワゴン)のガソリンFWD車で最も車重の重いモデルで1.3tである。

コンパクトカーでは最重量級なのだが、動力性能で車重のハンデを感じることはなかった。むしろ、重みで微小な負荷変動を潰していくような感覚が動力性能面での車格感を高めていた。

それを可能としているのが、ディーゼルならではの大トルク。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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