1970年代の当たり前 モーリス・マリーナ ヒルマン・ハンター ヴォグゾール・キャバリエ 後編

公開 : 2023.06.25 07:06

1970年代の英国で、会社員の足になった1.8Lクラスのサルーン。モーリス、ヒルマン、ヴォグゾールの3台を英編集部がご紹介します。

現代の高速道路にも問題なく対応できる

当初、初代キャバリエが生産されたのは、オペルのベルギー・アントワープ工場。ヴォグゾールとしては、初めての輸入車だった。製造品質は高く、1977年にロンドンの北に位置するルートンで生産が始まるまでに、同社のベストセラーへ躍り出ていた。

営業部門の中間管理職などに、キャバリエ 1900GLは強く響いた。見た目には高級感が漂い、ダッシュボードには時計が埋め込まれ、バックミラーには防眩機能が備わっていた。だが、メーター類や送風口に至るまで、インテリアはオペルのままだった。

ヴォグゾール・キャバリエ 1900GL(1975〜1981年/英国仕様)
ヴォグゾール・キャバリエ 1900GL(1975〜1981年/英国仕様)

リチャード・ワッツ氏のシグナル・イエローのキャバリエは、1976年式。前輪駆動へ切り替わった2代目へは、1981年にモデルチェンジしている。

彼は2006年に購入し、忠実度と実用性を重視したレストアを施したという。見事、ヴォグゾールのパンフレットを飾れそうな見た目に仕上がっている。

「キャバリエは、当時のライバルより進んでいました。1.9Lエンジンは柔軟で扱いやすいです。駐車時はパワステが欲しくなりますが、スピードが乗ってくれば軽くなります」。とワッツが話す。

「1970年代のクルマとして、ロードホールディング性は素晴らしいと思います。ブレーキは、現代的なクルマに引けを取りません。エアコンとパワーウインドウ、集中ドアロックはありませんが、それ以外は47年前だとは思えませんよ」

「現代の高速道路にも、問題なく対応できます。自分が追い越し車線を爽快に走っていると、隣のドライバーに驚かれることもありますね」

アンダーステアに悩まされたマリーナ

少しくすんだイエロー・グリーンのサルーンは、モーリス・マリーナ 1.8スーパー。1968年に再統合され生まれた、親会社のブリティッシュ・レイランド(BL)が作ったジョークだと、英国では揶揄されることもある。愛情を込めて。

ストライキや停電などが頻発した、1970年代の混乱する英国経済を象徴する量産車だとみなされることも多いが、実際は少し違う。モーリス・マイナーとオックスフォード・シリーズVIの後継車として、プロジェクト名「ADO28」の開発は1968年に始まった。

モーリス・マリーナ 1.8スーパーと、オーナーのジョン・キングスフォード氏
モーリス・マリーナ 1.8スーパーと、オーナーのジョン・キングスフォード氏

オースチン・ブランドには前輪駆動モデルをラインナップし、モーリスでは後輪駆動モデルを提供するという方針を、BLは立案。前輪駆動のオースチン・アレグロと同じエンジンを搭載したマリーナは、1971年4月27日に発表された。

トリムグレードは、デラックスとスーパー、TCという3段階を設定。エンジンは1.3LのAシリーズか、1.8LのBシリーズという、定評のある選択肢が用意された。

サスペンションは、当初マクファーソンストラット式が計画されていたものの、コスト削減を理由にレバーアーム式ダンパーへ変更されている。「理想的な決定ではなかったですよね」。と、現オーナーのジョン・キングスフォード氏は苦笑いする。

「開発期限と予算の都合で、妥協は避けられなかったのでしょう」。と理解を示すが、初期のマリーナ 1.8はアンダーステアに悩まされたことも事実だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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