フォード・レンジャー 詳細データテスト 柔軟な操縦性 操舵はSUV並み 乗用に不満のないトラック

公開 : 2023.06.24 20:25  更新 : 2023.07.04 00:11

結論 ★★★★★★★★★☆

ピックアップトラックセグメントの衰退ぶりを見れば、フォードは新型レンジャーの開発を適当に済ませたくなったとしてもおかしくない。ところが、そうはしなかった。ライトコマーシャルヴィークルの妥協点の数を減らすべく、中身のある改良を施したのである。

新型レンジャーは、商用トラックとしても乗用仕様としてもルックスはすばらしく、オフロード性能が半分以下の乗用車でもこれより乗り心地が悪いクルマはわずかながらある。ハンドリングは、大型SUV並みだ。ワイルドトラック仕様なら、インテリアもSUVとそう変わらない。大事なのは、それでいてトラックのキモがすべて備わっているという点だ。

結論:実用性は高く、運転は乗用車感覚。全体的に、文句のつけどころは見つけ難いクルマだ。
結論:実用性は高く、運転は乗用車感覚。全体的に、文句のつけどころは見つけ難いクルマだ。    JOHN BRADSHAW

そのヘヴィデューティな作りの影響をすべてカバーできているわけではないが、ライバルたちはこのレンジャーの域に達してはいない。音のうるさいディーゼルエンジンも、このクラスの基準に照らせばさほど不満には感じない。価格は高いが、V6を選ぶことで簡単に解決できる問題でもある。

総じて新型レンジャーは、きわめて完成度の高いピックアップで、商用トラックに乗っていることは、意識させられる機会より忘れてしまうほうが多い。仕事にもレジャーにも使えるといういまどきのピックアップトラックの目指すものはしっかり備えているが、それはなかなかのいい仕事ぶりだ。

担当テスターのアドバイス

イリヤ・バプラート

個人的に買うことはないと思えるSUVやクロスオーバーは多い。客観的に見て、同格のハッチバックに劣っているものを、ちょっとばかり車高が高いというだけの理由で選ぶことはできない。しかしレンジャーは、バンなど完全に見下ろす高さで、悪路もスイスイ走る。別格だ。

マット・ソーンダース

たしかにF−150ライトニングと比べれば、レンジャーは英国の路上でもバカげた巨体には見えない。それでも、これだけのサイズのクルマは、駐車場所を考える必要がある。

オプション追加のアドバイス

最廉価グレードのXLと1段上のXLTなら、装備の差はさほど大きくないので、XLで十分。日常使いにはワイルドトラックがいい選択だが、オフロード志向のユーザーにはトレマーかワイルドトラックXのほうが向いているだろう。レンジローバーを買える金銭的余裕があるなら、追加予定のプラチナムを待ちたい。

改善してほしいポイント

・2.0Lツインターボディーゼルは、もっと音を静かにしてほしい。
・ステアリングホイールには、もう少し上質なレザーを使ってもらいたい。
・ATセレクターの節度感はもっと強くないと、ブラインドではRレンジに入れにくい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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