アルファ・ロメオ・ステルヴィオ 詳細データテスト 乗り心地は硬め 軽さゆえの動力性能 楽しい走り

公開 : 2023.07.08 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

ステルヴィオは、目指すダイナミクスを達成するために、きわめてダイレクトなルートを選択した。ミッドサイズSUVの多数はより脚を硬くして、ハンドリングはエネルギッシュかつ張りつめた、レスポンスに優れたセッティング。この手のクルマに想像するよりわずかながら活発で、一体感を味わえるものとなっている。

シャシーは、鋭さを生み、クイックなフロントの操舵系へ有意義な後押しをするために妥協を廃したリアアクスルに依るところが大きい。このチューニングは、乗り心地については多少の犠牲を払うことになる。

ハンドリングは、SUVっぽさよりアルファらしさが上。ボディコントロールや身のこなしは、マカンのようなものとも違う。
ハンドリングは、SUVっぽさよりアルファらしさが上。ボディコントロールや身のこなしは、マカンのようなものとも違う。    JOHN BRADSHAW

しかし、コーナリング時の横方向のボディコントロールと一貫したスタビリティをもたらすいっぽう、限界域でのハンドリングは、タイヤのグリップ限界寸前で穏やかなアンダーステアへと至る。そしておそらく、パワーオンでの挙動は、謳い文句ほどには遊べるバランスと後輪駆動っぽさを感じさせない。

定常状態でのハンドリングバランスは良好で、ほどよいグリップレベルが続くが、常時オンの電子制御スタビリティコントロールシステムと、常にフロント優勢なシャシーが、このクルマの華々しくファンな部分にフタをしてしまっている。

SUVとしてみれば、ハンドリングのエンタテインメント性はほどほどでいいのだが、われわれの経験からすれば、同じプラットフォームで後輪駆動のジュリアは、そこがはるかに上回っていた。

ステルヴィオのステアリングは速くて軽く、アシスト強めな、近年のアルファらしいフィールだが、ちょっと後付け感がある。ダイナミックモードでは、ほんの少しだけ手応えが重くなる。

エアサスやアダプティブダンパー、4WSを備えた競合するプレミアムSUVに、設定変更能力では敵わない。それでも、全開で走らせれば、楽しさで負けているとは絶対に言わないはずだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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