週末ドライブも楽しめる フォード・プーマ ST 1.0ハイブリッドへ試乗 3気筒ターボ+ISG

公開 : 2023.08.25 08:25

程よくエネルギッシュなクロスオーバー、プーマ ST。新しく追加されたマイルドHV版を、英国編集部が評価しました。

1.0L 3気筒ターボ+ISGのマイルドHV

英国では、程よくエネルギッシュなクロスオーバー、フォード・プーマ STが人気だ。これまでは電動化技術の載らないガソリンエンジン版のみだったが、僅かに予算を増やすことで、マイルド・ハイブリッド版も選択できるようになった。

少しの初期投資でガソリン代を節約でき、CO2の排出量も減らせる。しかし、このエンジンの2択は、そう簡単なものではないようだ。

フォード・プーマ ST 1.0エコブースト・ハイブリッド(英国仕様)
フォード・プーマ ST 1.0エコブースト・ハイブリッド(英国仕様)

その理由の1つが、マイルド・ハイブリッドのプーマ STは、7速デュアルクラッチATのみとなること。他方、ガソリンエンジンのプーマ STでは、6速MTを選択できるのだ。

既存のプーマ STのパワートレインは、生産が終了してしまったフィエスタ STと同じ、最高出力200psの1.5L直列3気筒ターボ。WLTP値での燃費は15.2km/Lがうたわれ、CO2排出量は149g/kmと良好。また、0-100km/h加速は6.7秒という俊足の持ち主だ。

今回追加されたマイルド・ハイブリッドの場合、フロントに載るのは排気量の小さい1.0L 3気筒ターボエンジン。電圧48Vで稼働するスターター・ジェネレーター(ISG)が、アシストを加える。

ISGの働きは従来どおり。プーマ STが減速している時に、運動エネルギーを電気エネルギーとして回収。加速時などエンジンの負荷が高まる場面で、再び運動エネルギーへ還元するという仕組みとなる。

好印象な低速域でのアクセルレスポンス

高効率で複雑なトヨタのハイブリッドと比較すれば、構成はかなりシンプル。得られる効果も限られている。カタログ上の燃費は15.9km/Lで、割合でいうと5%ほど伸びるに過ぎない。CO2排出量は144g/kmとなり、5gだけ少ない。

システム総合での最高出力は170psで、15%のパワーダウンとなる。0-100km/h加速も、7.4秒へ落ちている。実際に乗り比べてみると、明らかにダッシュ力は劣る。1.5Lターボ版が良いかな、と思う読者もいらっしゃるだろう。

フォード・プーマ ST 1.0エコブースト・ハイブリッド(英国仕様)
フォード・プーマ ST 1.0エコブースト・ハイブリッド(英国仕様)

メリットといえるのが、自らシフトチェンジをしたくないというドライバーのために、ステアリングホイールの奥へシフトパドルが備わること。比較的小さく、目立つアイテムではないが。一般的なフォードのモデルと異なり、MT車との価格差も小さくて済む。

もう1つ、低速域でのアクセルレスポンスがすこぶる良い。渋滞時など、微妙な速度調整が非常にしやすいと感じた。細かくアシストを加えてくれるISGが、この好印象を生んでいる。3気筒エンジンの唸りが、遠くから聞こえてくるけれど。

全体の印象としては、市街地が主なフィールドとなるプーマ STの特性に、マイルド・ハイブリッドのパワートレインは良く馴染めている。200psを発揮する1.5L版と比較しなければ、恐らく大きな不満を抱くことはないと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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