ミュルザンヌを290km/hで疾走 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2) 1973年ル・マンで総合4位

公開 : 2023.10.01 17:46

トップクラスにハンサムなボディ

もちろん、今回ご紹介するRSR R7は本物。1973年のワークスチーム・マネージャー、ノルベルト・ジンガー氏によって認証を受けたクルマだ。

狭くびしょ濡れのヒルクライムコースで、RSR R7を運転している状況をノルベルトが知ったら、恐らく疑問を抱くに違いない。爆音のエグゾーストノートがノイズ計の針を振り切ってしまい、グッドウッド・サーキットの走行が許されないのだ。

ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)

幸いにも、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、ノイズ制限がない。しかし、イベントのサービス車両がコース上に土を残し、カットスリックにしか見えないタイヤでは自信を抱きようがない。

斜め後方からの容姿は、これまでル・マン24時間レースで結果を残したマシンの中でも、トップクラスにハンサム。そして、驚くほど小さい。マルティーニ・カラーのストライプが視覚刺激を増している。

ボンネットには、燃料のフィラーキャップが2つ。片方は給油用で、もう一方は空気抜きの役割を果たす。小さなクリップが、前後のガラスを押さえつける。高速走行時に、気圧で外れるのを防ぐためだ。

大きな46のゼッケンの隣に、小さなライトがついている。夜間でも番号を確認できるように。リアウイングは圧倒されるほど大きい。ダウンフォースで、超高速域を安定させるに違いない。

冷静にモノを考えられないほどやかましい

バケットシートへ腰を下ろし、細いレザー・ストラップを引いてドアを閉める。前方の眺めは、量産版の911と遠からず。センタートンネルには、ル・マン24時間を戦ったジィズ・ヴァン・レネップ氏のサインが記されている。2023年に一筆願ったそうだ。

フロアはスチールがむき出しで、ロールケージがボルトで固定されている。しっかりレーシングカーだ。正面にはVDO社製のメーターが4枚。タコメーターは7000rpmからレッドラインで、スピードメーターは300km/hまで振られている。

ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(1973年式)

モモ社の3スポーク・ステアリングホイールが、まっすぐ突き出ている。これもオリジナル品だという。

クルマの管理者がキーを見失ってしまい、とりあえずマイナスドライバーを刺してシリンダーをひねる。即座にエンジンが爆発し始め、アイドリングは2000rpmと高い。フルフェイスのヘルメットを被っていても、冷静にモノを考えられないほどやかましい。

とはいえ、ポルシェのレーシングユニットの音響を、嫌いなカーマニアはいないだろう。ストロークの長いクラッチペダルを踏み、回転数を保ちながら1速へ入れる。3000rpm以下で一気にアクセルペダルを倒すと、バランスが狂いボディが跳ねてしまう。

冷静さを保ちつつ、右足を加減する。低速域ではワンダリングが激しい。コース上の水たまりのせいなのか、トラクションの問題なのか、特有のステアリングラックの曖昧さなのか、原因を掴みにくい。恐らく、それぞれ影響し合っているはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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