むしろマイルドがイイ シトロエンC5 エアクロス・ハイブリッドへ試乗 スポーティじゃないという魅力

公開 : 2023.10.29 19:05

シトロエンの中型SUVにマイルドHV版が登場 スポーティではないことが走りの魅力 プラグインHVより好印象 英国編集部が一般道で評価

1.2Lガソリンターボ+28psの電気モーター

バッテリーEVの展開と比べると、やや遅れ気味に思えるシトロエンのハイブリッド・ラインナップ。だが、小さな駆動用モーターを採用したシステムの準備が整い、中型SUVのC5 エアクロスから採用がスタートした。

お値段は、英国の場合は1.5Lのディーゼル版より約1000ポンド(約18万円)お高い程度。非ハイブリッドのガソリン版と比較しても、約2000ポンド(約36万円)のプラスに留まる。

シトロエンC5 エアクロス・ハイブリッド 136シャイン(欧州仕様)
シトロエンC5 エアクロス・ハイブリッド 136シャイン(欧州仕様)

このクラスのSUVでプラグイン・ハイブリッドを選ぼうとすると、4万ポンド(約724万円)前後する場合が英国では一般的。ガソリン価格が高いこの地では、魅力的な選択肢に感じる人は少なくないはず。

パワートレインの構成は、ステランティス・グループの1.2L 3気筒ガソリンターボエンジンが主役。燃費効率の向上を求めて、バルブの開閉タイミングを調整したミラーサイクル技術が導入されている。

トランスミッションは6速デュアルクラッチ・オートマティックで、ここに28psと5.6kg-mを発揮する、電圧48Vで制御される駆動用モーターが内蔵されている。コンパクトな駆動用バッテリーは、助手席の座面下へ積まれている。

電動化の恩恵として、市街地では最大30%、複合的な条件でも平均で15%、燃費が改善したとシトロエンは主張する。プラグイン・ハイブリッドのように、大きな駆動用バッテリーを積むことで車重が増えたり、荷室が狭くなったりもしていない。

スポーティではないことが動的特性の魅力

かくして、C5 エアクロス・ハイブリッドの走行フィーリングは、静かで心地良い。反応が素直で扱いやすい。

試乗車は、18インチ・ホイールを履くシャイン・グレード。油圧式バンプストッパーが追加される、アドバンスド・コンフォート・サスペンションが装備され、橋桁の継ぎ目などを優しくいなしていた。鋭い入力に、対応しきれない場面も感取されたけれど。

シトロエンC5 エアクロス・ハイブリッド 136シャイン(欧州仕様)
シトロエンC5 エアクロス・ハイブリッド 136シャイン(欧州仕様)

シトロエンらしく、C5 エアクロスは快適性や洗練性、使い勝手を優先して仕立てられている。決してスポーティな印象を与えないものの、それが逆に動的特性の魅力の一部を構成しているようだ。

それでもグリップレベルに不足はなく、背が高めのボディの姿勢制御は充分にタイト。ドライバーへ不安を抱かせない、正確で安全な操縦性を獲得している。

パワートレインの印象は、パワフルでありつつ洗練性で僅かに劣る、1.6L 4気筒のプラグイン・ハイブリッドより好ましい。C5 エアクロス全体の雰囲気にも、より合致しているように思う。

1.2L 3気筒エンジンが回転を止めるのは低速域に限られるが、基本的に動作中は静かで滑らか。高速道路の速度域でもパワー不足は感じられず、長距離でも運転しやすい。かなり鋭い加速を求めない限り、存在が目立つことはないようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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