マクラーレン・アルトゥーラ PHEVでも存在する「らしさ」の隠し味 マクラーレン第2章

公開 : 2024.01.02 20:25

マクラーレン「らしさ」

そうした成果は、アルトゥーラに試乗すると、たちどころにして理解できる。

率直にいって、乾燥重量の1395kgは、マクラーレンとしてはヘビー級だが、直近のライバルに対しては80kg近くも軽い。それでも、おそらくはモーターを活用したパワートレインのレスポンスのよさ、そしてサスペンションやステアリングなどの設定により、750SやGTよりも明らかに軽快な反応を示してくれる点は驚きでさえある。

マクラーレン・アルトゥーラ
マクラーレン・アルトゥーラ

その乗り心地はマクラーレンらしく実にしなやかで洗練されたもの。私はスペインで行なわれた国際試乗会を始めとして、これまでに7~8台のアルトゥーラに試乗したことがあるが、そのなかで、つい先日試乗した1台だけが低速域でゴツゴツした印象を伝えたものの、それ以外はどれも実に快適だった。

アルトゥーラの軽快な印象は、高速道路でも、さらにいえばサーキットを走っても変わらない。常に的確なロードインフォメーションをドライバーに伝えつつ、圧倒的なスタビリティとコントロール性をもたらしてくれる点は、いかにもマクラーレンらしいもの。

そしてミドシップスポーツカーとは思えないほど視界が優れている点も、マクラーレンの優れた伝統といえる。とりわけ斜め後方の視界が良好な点は、高速道路の流入などでバツグンの安心感を生み出してくれるはずだ。

そう、アルトゥーラはハードウェアのほぼすべてが刷新されたが、ドライビングの歓びはこれまでのマクラーレンとまるで変わるところがない。とりわけ、パワー至上主義に走らず、なによりもバランスを最優先して作り込まれている点は、いかにもマクラーレンらしい。

そしてこの思想は、1960年代から1980年代にかけてイギリス系F1チームが実践してきた伝統をダイレクトに受け継いだものでもある。いずれにせよ、電動化時代を迎えてもマクラーレンのポジションとキャラクターが不変であることは間違いなさそうだ。

試乗車のスペック

価格:3070万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4539×1913×1193mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
燃料消費率:4.6L/100km
CO2排出量:104g/km
車両重量:1395kg
パワートレイン:V型6気筒2993cc+モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps/7500rpm
最大トルク:73.42kg-m/2250rpm
ギアボックス:8速オートマティック
タイヤサイズ:235/35ZR19(フロント)295/35ZR20(リア)

マクラーレン・アルトゥーラ
マクラーレン・アルトゥーラ

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    1986年生まれ。クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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