マクラーレン・アルトゥーラ PHEVでも存在する「らしさ」の隠し味 マクラーレン第2章

公開 : 2024.01.02 20:25

PHEV化されたマクラーレンである、アルトゥーラに試乗しました。これまでのパッケージングとは一線を画すマクラーレンは、果たしてどのような仕上がりとなっているのでしょうか? そのキャラクターを探ります。

マクラーレンは金太郎アメ?

2010年に誕生したマクラーレン・オートモーティブは、これまで基本的にひとつのカーボンモノコック/V8ツインターボエンジン/7速DCTをベースにして様々なスーパースポーツカーを生み出してきた。

クチの悪い人は、これについて「まるで金太郎アメのよう」などと揶揄してきたが、そういう人に限ってマクラーレンの各モデルに真剣に乗った経験がないのではないだろうか。

マクラーレン・アルトゥーラ
マクラーレン・アルトゥーラ

では、なぜこれまでマクラーレンが共通といって差し支えないコンポーネンツを使い続けてきたかといえば、ひとつには、彼らが標榜する「軽量かつ優れた空力特性により、圧倒的な一体感を生み出すスーパースポーツカー」というコンセプトを実現するのに、これ以上、理想的なハードウェアがほかに見つからなかったことが挙げられる。

しかも、そうしたコンポーネンツは物理的な特性にも優れていたので、マクラーレンが「創造」する様々なキャラクターのスーパースポーツカーを作るうえで、万能ともいえるほどの可能性を発揮した。おかげで、サーキット走行向きからロングツーリング向きまで、多種多様なモデルを次々と市場に投入できたのである。

そうはいっても、マクラーレン・オートモーティブの処女作である12Cが誕生して以降の約10年間に、モノコックもエンジンもトランスミッションも様々な改良を受けていたのは事実。

ただし、2022年にデビューしたアルトゥーラは、それまでとはまったく異なるコンポーネントを用いて誕生した、マクラーレン・オートモーティブ第2章の始まりというべきモデルなのである。

PHEVのマクラーレン

アルトゥーラの最大の特徴はパワートレインにプラグイン・ハイブリッドを採用した点にある。

もっとも、彼らにとってこれは初めて経験ではなく、2013年にはマクラーレン初のPHEVとなるP1をリリースしているが、モーターやバッテリーに関するテクノロジーは当時から長足の進歩を遂げている。

マクラーレン・アルトゥーラ
マクラーレン・アルトゥーラ

そこで、そうした最新のPHEV用パワートレインにあわせて、すべてのコンポーネントをゼロから見直して開発されたのがアルトゥーラだったのである。

たとえば先進的な素材を活用して新設計したカーボンモノコックは、キャビン直後の低い位置にバッテリー用スペースを設定。燃料タンクはこの上部に配置するレイアウトとした。

バッテリーというエンジンに次ぐ重さのコンポーネントをできるだけ低く、車体の中心近くにレイアウトするのはレーシングカーでもお馴染みの手法。こうしてPHEV化に伴うネガを最小限に留めようとしたのだ。

さらにいえば、こちらも新設計となるV6ツインターボエンジンや初目見えの8速DCT(従来は7速DCT)も、小型軽量に徹底的にこだわって開発されたものばかり。こうすることで、マクラーレンの重要なコンセプトである軽量/低重心をPHEVで実現したのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。
  • 撮影

    小川亮輔

    Ryosuke Ogawa

    1986年生まれ。幼少期から父親の影響でクルマに惹かれている。独身時の愛車はシボレー・コルベットC5 V8 5.7Lのミレニアムイエロー。現在はレンジローバーV8 5.0L(3rd最終型)に家族を乗せている。2022年、SNSを通してAUTOCAR編集部の上野太朗氏に発掘される。その2日後、自動車メディア初仕事となった。instagram:@ryskryskrysk
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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