「いいクルマ」でも・・有能なEVといえる? レクサスRZ 長期テスト(最終) 航続距離が最大のネック

公開 : 2024.03.23 09:45

レクサス初のバッテリーEV専用モデルとなるRZ 高価格帯のSUVとして充分な能力を備えるのか 英国編集部が長期テストで確認

積算1万2699km 想像以上に市街地でも扱いやすい

バッテリーEVは、従来以上に軽量化と空力特性が重視される。航続距離へ大きく影響を及ぼすからだ。しかし最近は、それへ背を向けるように、体積や質量が大きくなりがちなSUVやクロスオーバーへ人気が集まっている。

レクサスRZも、悩ましい問題へ対峙したモデルの1台だ。ただしこのクルマの場合、少しでも軽くし、少しでも長く走れること以上に、贅沢さを優先したように思える。

レクサスRZ 450E タクミ(英国仕様)
レクサスRZ 450E タクミ(英国仕様)

トヨタbZ4Xと深い関係性を持つ、RZを初めて運転した時、非常に強く印象付けられた。バッテリーEVであることを、あえて前面には主張していないように感じたためだ。実力の高い、BMW iXなどとガチンコで戦うモデルでありながら。

これまで筆者は、約1万kmを一緒に過ごしてきたが、初めに掲げた疑問への答え合わせをしてみよう。長期テストの締めくくりとして。

ミドルサイズの電動クロスオーバー、RZは、ロンドンの中心部でも扱いやすいのか? 答えはイエスだろう。見た目と裏腹に、想像以上に扱いやすかった。

とはいえ、ディフェンダー 110より僅かに長い全長と、僅かに狭い全幅を持つため、多少の妥協は必要だった。設計の古い立体駐車場は、諦めざるを得なかった。

そのかわり、荷室は522Lと大きい。大人4名でロックフェスを楽しむのに必要なキャンプ道具などを、リアシートをたたまずに積むことも余裕だった。

レクサスの水準を満たす 航続距離は不充分

レクサスというブランドの水準を満たす仕上がりか? この答えも、概ねイエス。

車内はとても居心地が良い。内装はアルカンターラで覆われ、フロントシートにはニーウォーマーも備わった。14.0インチのインフォテインメント用タッチモニターも、機能的で優れていた。トヨタの既存モデルからの流用と思しき部品も、散見されたけれど。

レクサスRZ 450E タクミと筆者、ウィル・リメル
レクサスRZ 450E タクミと筆者、ウィル・リメル

カタログ値の405kmという航続距離は、どの程度の真実味があるのか? 筆者の往復約200kmの通勤には充分か?

答えは、ノーへ限りなく近い。実際の電費は、気を使って運転して4.5km/kWh。エアコンを動かすだけで、航続距離は50kmから80kmも短くなってしまう。

高速道路の巡航では、走れても最長290km。容量65kWhの駆動用バッテリーへ優しい気象条件で、低い速度域が中心の市街地でも、350km以上走れたことは1度もなかった。

上級バッテリーEV市場で、善戦できる能力はあるか? これは主観的な感じ方もあるから、回答が難しい。しかし、際立つ強みは多くないだろう。

BMW iXの英国価格は、約7万1000ポンド(約1342万円)から。航続距離は最長614kmが主張され、実力の高さは間違いない。電動のレンジローバーが2024年後半に登場すると、この市場の競争は本格的なものになるだろう。

ライバルの主要な価格帯は、確かにRZより少し上にある。だがiXのように、レンジローバーも洗練されているはず。レクサスには、定番ブランドが存在感を示すカテゴリーで競い合うという、簡単ではない戦いが待っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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