【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#4 命名・大貴族号!

公開 : 2025.04.11 12:05

フェラーリは新興成金だが、マセラティは没落貴族だ」

数分後、連絡がきた。

タコちゃん「無事落札しました。ありがとうございますウヒャヒャヒャヒャ!」

マイクロ・デポの拠点に到着した、命名・大貴族号!
マイクロ・デポの拠点に到着した、命名・大貴族号!    岡本和久

入札者なんて、他に誰もいなかったのだ。涙。

数日後。

タコちゃんより、「清水さんのクアトロポルテが、弊社のつくばの拠点に到着しました」と連絡があり、写真が添付されていた。

それはまさに、貴族が乗るクルマだった。

マセラティを愛したハードボイルド作家の北方謙三先生は、「フェラーリは新興成金だが、マセラティは没落貴族だ」と仰ったけれど、これぞ没落貴族! 新車時は1540万円くらいしたクルマが、たったの200万円で買い叩かれ、やんごとなき畿内から坂東へと下向したのである。フェラーリV8積んでるのに! ケン奥山の傑作デザインなのに! この没落ぶりはまさにロマン!!

私は思った。「これは大貴族だな……」と。

現在、世界中からいわゆる『貴族』は消えている。残っていても、かつての特権を奪われ、資産(お城とか)の維持に四苦八苦し、入場料を取って生計を立てていたりする。増してや『大貴族』なんて、第二次世界大戦で完全に絶滅した。

しかしこのクルマには、大貴族の香りがある。もはや世界中のどこにもいない大貴族が、奇跡的に生存していたかのようだ。

命名・大貴族号。まだ実物と対面してないけれど。

(つづく/毎週金曜日昼頃公開予定)

記事に関わった人々

  • 執筆

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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