【現役デザイナーの眼:ダイハツ・ムーヴ】スタイリッシュなスライドドア車という個性も、冒険できない軽の難しさ

公開 : 2025.07.01 11:05

軽自動車デザイン特有の、理想と現実

2023年の第1回ジャパンモビリティショーで、ダイハツは最も感銘を受けたメーカーのひとつでした。ミニマルなデザインのコンセプトカーを多数出展していて、ダイハツ・デザインの変化を感じたのです。ですので、この時の期待値を鑑みると、新型ムーヴはかなりコンサバティブだな、と思ったのが正直なところです。

ただ、現実問題、様々なユーザー層がいる軽自動車において、必ずしもミニマルデザインが好まれる訳ではないところが難しい部分なんですね。

バンパー部の工夫で、ランプなどの要素がかなりリフトアップされた印象があるリア周り。立体構成含めて、全体の中でも一番意図を感じる部位だと思う。
バンパー部の工夫で、ランプなどの要素がかなりリフトアップされた印象があるリア周り。立体構成含めて、全体の中でも一番意図を感じる部位だと思う。
    ダイハツ

しかも今回『カスタム』がラインナップから無くなった事も、デザインに影響しているかもしれません。

ベースとカスタムの作り分けは、1台のクルマで異なる嗜好を持ったターゲットに訴求出来る大変優れた手法だと思います。この考えは他メーカーにも波及し、例えばトヨタノアヴォクシーも同じ手法ですね。

メーカーとしては少ない投資で多くのユーザーに訴求出来るのですが、新型ムーヴは異なった戦略を取りました。この結果、1台で幅広いユーザーを取り込まないといけないので、冒険的なデザインが難しかったという側面がありそうです。

現在、軽自動車の販売台数を見ると、N-BOX、スペーシア、タントのスーパーハイト系がトップ3を独占しており、この傾向が今後も続くでしょう。そのような市場の中でダイハツは近年、少し存在感が薄くなった印象があります。そこで、例えコンサバティブでも誰もが『カッコいい』、『ちょうどいい』と感じるデザインのスライドドア車を投入して、タントに続くもうひとつの柱を育てようとする狙いがあるのだと感じます。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

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