【第10回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~キャッププライの進化~

公開 : 2025.07.16 17:05

しなやかさと形状保持を両立

そうなんです。クルマがさらに高性能化して高速化し、それに伴ってタイヤがワイドになり偏平率が低くなると、さらなる補強が必要になってくるのです。

ナイロンで収縮張力をかけても、材料自体に伸張性があるので、高速の遠心力には抗えないのです。

タイヤ本体にはサイズだけでなく素材の情報なども刻まれる。目を凝らすと、ポリアミドの文字が見える。
タイヤ本体にはサイズだけでなく素材の情報なども刻まれる。目を凝らすと、ポリアミドの文字が見える。    斎藤聡

そこでタイヤメーカーが目を付けたのがアラミド(≒ケブラー)でした。

1980年代後半から90年代初頭頃。初代ピレリP-ZEROが使用して、フェラーリF40ポルシェ959、ランボルギーニカウンタック(アニバーサリー)などに採用しています。

グッドイヤーシボレーコルベット(C4)にイーグルRS-Zで、コンチネンタルはコンチスポーツコンタクトに採用してメルセデス・ベンツBMW Mシリーズにといった具合で、各メーカー超高速域でのタイヤ形状にはかなり苦労していたことがうかがえます。

ただ、アラミドは伸張性がほぼないので、タイヤの膨張は防げるのですが柔軟性に乏しく、どうしてもしなやかさに欠け、乗り心地が硬質になってしまう傾向にありました。

これを解決したのが、ハイブリッドコードと呼ばれるアラミド(≒ケブラー)とポリアミド(≒ナイロン)を縒って糸にしたコードを使ったキャップレイヤーです。

伸張性のあるナイロンと伸張性がほぼないアラミド糸をらせん状に縒っているため本来伸張性のないケブラーに伸縮シロができ、しなやかさと超高速域でのタイヤの形状保持を両立することができるわけです。

資料をひっくり返してみると、どうやらホンダNSX専用に開発したブリヂストンのポテンザRE010に、ケブラーとナイロンのハイブリッドコードが採用されていたようです。1994年のことです。

ボクがハイブリッドキャッププライの凄さを実感したのは、2007年のドバイでおこなわれたピレリP-ZEROの試乗会でした。

伸縮性のあるナイロンと、伸縮性がほぼないアラミドをより合わせてコードにすることで、アラミド単体では出せない柔軟性を作り出すことができるという説明は、ナルホド! と手を打ちたくなるほどでした。

試乗会で乗った新型P-ZERO(P-ZERO THE HERO)は、高いケース剛性の中にしなやかさを持っていて、しっとり&強力に路面をとらえているような乗り味があり驚かされたのを覚えています。

ナイロンとアラミドのハイブリッドのハイブリッド・キャップレイヤーを搭載したタイヤで高速台上試験をしたらどんなふうに見えるのでしょう? 外形は変わるのでしょうか。 どのくらいせり上がるのでしょう? 今日も今日とて、興味がつきません。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オーバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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