ルノー5からパンダまで、小型車を救った人物 フランソワ・ルボワン氏:デザイナー賞 AUTOCARアワード2025

公開 : 2025.07.29 11:05

フィアットの未来を形作る

ルボワン氏は最初から工業デザイナーだったわけではない。フランスのノルマンディー地方で育った彼は、まず美術を学び、その後デザインに応用し、大学で工業デザインを専攻した。そこで縁あって、パリを拠点とするデザイン事務所MDBに3年間在籍し、韓国のTGVやトラム(路面電車)などのプロジェクトに携わることになった。

「どの仕事もトラムに関するものばかりでした」と彼は微笑む。「当時、欧州のすべての都市がトラムを導入したがっていましたから」

フランソワ・ルボワン氏(左)と記者
フランソワ・ルボワン氏(左)と記者

しかし、自動車デザインへの情熱が「満たされない」まま、ルボワン氏はロンドンにあるロイヤル・カレッジ・オブ・アートに留学し、そこで最終的にルノーの支援を受けて就職した。

彼はまず、2代目メガーヌのデザインに携わり、最終的には3代目のデザイン責任者まで務めた。「プロダクトデザインとして初めての経験でした。彼らはわたしをアーティストとして迎え入れ、エンジニアリングとは何か、そして物事をうまく機能させる方法を教えてくれました」

ルノー在籍中、ルボワン氏はクリオ、キャプチャー、ダチア・サンデロの開発においてエクステリアデザインスタジオを率いた。その後、アドバンスドデザインスタジオに移り、5やルノー・モルフォズなどの開発に携わった。

ルノーで20年ほど働いた彼だが、フィアットへの移籍は望んでいなかったと語る。「わたしは自動車業界の未来を計画していますが、自分の将来についてはあまり考えていないんです」と彼は冗談めかして言う。しかし、移籍の機会が訪れたときは「あまりにも興味深くて、見逃すことはできなかった」という。妻と子供たちからも熱烈な賛成を受け、彼はフィアットへ移ることを決意した。

多くのデザイナーと同様、ルボワン氏も一緒に働くチームを高く評価しており、AUTOCARアワードの受賞は彼自身だけでなくチーム全体の成果だとしている。

「チームはエネルギーに満ちています。人数もリソースも限られていますが、彼らはこれまでやったことのないことに挑戦する勇気を持っています。わたしは自分が望むものを明確にイメージしていましたが、彼らはそれを迅速かつプロフェッショナルに実現してくれました」

今後もさまざまな展開を控えている。グランデ・パンダは、パンダをベースにした5つのコンセプトカーの1つに過ぎず、これらすべてが今後数年で量産化される予定だ。また、新型パンダや、定番の500の新モデル、その他のモデルも登場する。

ルボワン氏は、今後の製品には「レトロなセンス」が盛り込まれると言うが、「過去を知らなくても、これらの製品は受け入れられなければなりません。わたし達はポップカルチャーやカーカルチャーを融合しており、そのコードを知らない新しい世代にも受け入れられるデザインでなければなりません。彼らは、過去のレトロな要素を認識しないでしょう。グランデ・パンダを見た人は、単に現代のクールなクルマだと感じると思います」と付け加えている。

グランデ・パンダはまだショールームに登場したばかりだが、フィアットはすでに、長年獲得できていなかった地位を確立しつつある。「わたし達は可能性を切り開き、1台の車でブランドのイメージを一新しました」とルボワン氏は力を込める。「フィアットは500だけではない、新鮮な存在になりました。フィアットのあるべき姿に立ち返ったのです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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