【イタリア車乗り待望の1台】新型ランチア・イプシロンに渡辺敏史が初試乗!ついにどんなクルマかが明らかに

公開 : 2025.07.29 12:05

ステランティス側も腰を据えた投資

このエンジンに組み合わせられる電動モーターは、6速DCTとエンジンの間に挟まれるかたちで収められる。『e-DCT』と名付けられたこのドライブトレインは、ステランティスがベルギーのパンチパワートレインと共同開発したものだが、需要増を見込んでか合弁の生産設備を100%出資とするなど、ステランティス側も腰を据えた投資を行っているところだ。

同じ1.2LベースのMHEVでありながら、新型イプシロンのそれは既に日本導入されているフィアット600ハイブリッドやアルファ・ロメオジュニアなどとはアウトプットが異なり、エンジン側の出力は100ps(今年4月に110psへ向上)、モーター側の出力は約29psという組み合わせになる。

パワートレインは1.2L直列3気筒ターボ+モーターのマイルドハイブリッドとなる。
パワートレインは1.2L直列3気筒ターボ+モーターのマイルドハイブリッドとなる。    中島仁菜

恐らくハード的な面に違いはなくも、エンジン出力で劣るがモーター出力は勝るというセットアップは、搭載する車格に合わせたものなのだろう。そう思わせる違いが乗ってみると感じられた。

試乗車はランチアの創業年になぞらえて1906台の限定となる『エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ』だが、カーボックス横浜によれば既に受注済みの個体も多く、取材時点で在庫は3台。新たな入荷は難しそうとのことだった(今後は『LX』と呼ばれる上級グレード導入を検討中)。

パッケージは標準的なBセグメントそのもの

カップテーブル(タヴォリーノ)と呼ばれるセンターコンソールの象徴的な棚にはレザーを敷き、ダッシュボードトリムにも同系色のソフトパッドを多用するなど、カッシーナの誂えはこれみよがしではない上質感に満ちている。

シートはベロアに近い光沢感を持つモケットを中央部に配したものだが、シンプルなステッチワークでレザーにも勝る高級感を表せている辺りは、作り手に備わるセンス以外の何ものでもない。

グレードは1906台の限定となる『エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ』。
グレードは1906台の限定となる『エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ』。    中島仁菜

このモケットはリサイクル材という説もあるが、残念ながら言質は取れなかった。しかし、新型イプシロンの素材がサスティナブルを意識していることは間違いない。ちなみにパッケージは標準的なBセグメントそのものなので、乗る載せるについては過度な期待をしない方がいいが、長時間、長距離でなれば大人4人がきちんと移動できるくらいの容量は備わっている。

一方で、走りはBセグメント離れしたところも期待できる。サスペンションの路面追従性は高く、轍などの外乱要素にも柔軟に対峙してくれる。凹凸へのアタリもまろやかで、橋脚ジョイントや路肩の段差といった鋭利な入力をこなすにも痛々しさはない。

始終フラットでふわりと柔らかいけどロール量は適切……と、特筆するようなポイントはないが、八方巧く纏まった手練れのチューニングという印象だ。その乗り心地の良さに加えて遮音もしっかり行き届いているなど、新型イプシロンには上質なクルマとして配慮された跡が動的にも明らかにみてとれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    中島仁菜

    Nina Nakajima

    幅広いジャンルを手がける広告制作会社のカメラマンとして広告やメディアの世界で経験を積み、その後フリーランスとして独立。被写体やジャンルを限定することなく活動し、特にアパレルや自動車関係に対しては、常に自分らしい目線、テイストを心がけて撮影に臨む。近年は企業ウェブサイトの撮影ディレクションにも携わるなど、新しい世界へも挑戦中。そんな、クリエイティブな活動に奔走しながらにして、毎晩の晩酌と、YouTubeでのラッコ鑑賞は活力を維持するために欠かせない。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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