魅惑的ボディに圧倒的トルク モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(2) UKでは1台も売れず

公開 : 2025.09.28 17:50

17歳でスポーツカーを自作したペーター フェラーリとの不和で「ランボ」製作を決断 7.2L V8で375ps 息が詰まるほどの美貌に開放的なキャビン 思春期に憧れたUK編集部が希少GTを体験

英国では1台も売れず 2台と同じ内容はない

モンテヴェルディ・ハイスピード 375Lの英国ディーラーになったのが、ロンドンのハイゲート社。ポール・マイケルズ氏が、年間12台の輸入枠だったという当時を回想する。

「ペーター・モンテヴェルディさんから連絡があり、契約を結びました。明るくて話しやすい人物でしたよ。取材は沢山ありましたが、クルマは1台も売れませんでした」。1万450ポンドという高額が、その一因になった。悩ましい製造品質も理由になったはず。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様)
モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

少量生産のエキゾチック・モデルでは珍しくないが、ハイスピード 375Lには2台として同じ内容はなかった。また、最終的に何台生産されたのか定かでもない。

シリアルナンバーやオーナーの名前がリスト化された資料によれば、ハイスピード 375Lは66台ラインオフしたことになる。右ハンドル仕様は、その内の9台だ。

息が詰まるほどの美貌 開放的なキャビン

ご登場願った1台は、オーストラリアで1971年に登録されている。翌年のメルボルン・モーターショーで、モンテヴェルディ社ブースへ展示された車両、そのものでもある。

近年にレストアを受け、アメリカやオーストラリアのコンクール・デレガンスで表彰され、2024年にグレートブリテン島へやってきた。現在のオーナーは、アルバート・ヒッチコック氏。ガレージへしまい込まず、積極的に走らせているそうだ。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様)
モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ハイスピード 375Lは、知る人ぞ知るグランドツアラーだが、神秘性も漂わせる。息が詰まるほどの美貌で、胸がいっぱいになる。その内側へ秘めた実力は、視覚が構築するイメージへ応える事ができるのか、いたずらな疑問も湧く。

インテリアは、ボディほど完成度は高くないだろう。ドアを開くと、中央に巨大なトランスミッショントンネル。7.2Lのクライスラー社製V8エンジンは、中央寄りに搭載されている。ペダル周りは窮屈ながら、キャビン自体は開放的だ。

ボディ後方を沈めて加速 瞬間でわかる速さ

エンジンを始動すると、怒号に包まれるかと思いきや、車内が少し排気ガス臭い程度。初期型で、角ばった後期型よりダッシュボードが美しい。ボールの付いたシフトレバーでDを選択。右足を僅かに傾けると、ビッグブロックの唸りが微かに耳へ届く。

想像以上に扱いやすいが、グレートブリテン島の狭い田舎道との相性は良くない。渋滞も似合わない。開けた大地に伸びる一本道へ進めば、印象は一変する。エンジンは粘り強いトルクを湧出し、3速「トルクフライト」ATがスムーズに疾走させる。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様)
モンテヴェルディ・ハイスピード 375L(1969〜1976年/オーストラリア仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ギア比は、1000rpm当たり48km/hと高め。V8エンジンは最近リビルドされたばかりで、派手なテールアウトを誘う回転上昇は避けるべきだろう。

右足を更に倒すとキックダウン。車内は心地良い高音で満ち、リミテッドスリップ・デフが巨大なトルクを受け止めつつ、ボディ後方を沈めながら速度上昇が始まる。中域のパンチ力は間違いない。速いことが、瞬間でわかる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・ヘーゼルタイン

    Richard Heseltine

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

モンテヴェルディ・ハイスピード 375Lの前後関係

前後関係をもっとみる

おすすめ記事

 

人気記事