イタリア仕立てのシトロエンDS ボサートGT 19 フルア・デザインの希少クーペ 前編

公開 : 2022.07.31 07:05  更新 : 2022.08.08 07:05

フランスでは女神とも称される、シトロエンDS。ピエトロ・フルアが手掛けた優雅なクーペを、英国編集部がご紹介します。

エレガントさに見惚れてしまうボディ

正面からの容姿は、素晴らしく状態の良いシトロエンDSだ。滑らかなフォルムと、低く構えたスタンス。クロームメッキのバンパーに付いた、くさび形のゴム製オーバーライダーと、マーシャル社のヘッドライトが、なんともチャーミングに思える。

1962年式で、フェイスリフト後だと判断する人は、シトロエン・マニアに違いない。そこからボディサイドへ歩いていくと、見慣れたフォルムより遥かに短いことへ気が付く。

シトロエンDS ボサートGT 19(1960〜1964年/欧州仕様)
シトロエンDS ボサートGT 19(1960〜1964年/欧州仕様)

ルーフは、プレキシガラス製のリアウインドウめがけて、大きく傾斜している。そのまま、なだらかにトランクリッドへ繋がり、軽快にリアバンパーへ消えていく。

フィンのように切り立ったフェンダーラインが、なんとも当時のイタリアン。ピニンファリーナ社が手掛けたプジョー404 クーペや、コーチビルダー・ボディのフィアットにも似たテールライトへ導かれる。

「このライトはキャレロ社製です」。と説明するのは、現オーナーのクリストフ・パンド氏。「同時期のフィアット1500 カブリオレと同じライトです」

Bピラーに取り付けられたシトロエンのダブルシェブロンは、90度寝かされている。初期のデザインスケッチの段階から、このロゴが描かれていた。トランクリッドには、GT 19 ボサートと、モダンな書体で記されている。

初めて見ると驚くものの、一呼吸おくとエレガントで見惚れてしまう。ホイールベースを変えずにシャプロン社が仕上げたクーペも存在するが、それよりバランスは良いようだ。

DS パラスと同じ広々としたインテリア

GT 19のホイールベースは2650mmで、サルーンのDSより470mm短い。車高も70mm低い。カーデザイナー、フラミニオ・ベルトーニ氏による傑作の美しさを損なわずにクーペを生み出すには、相応の才能と技術が必要だったに違いない。

このスタイリングを描き出したのは、同じくカーデザイナーだったピエトロ・フルア氏。奇才の、もうひとりのイタリア人だ。

シトロエンDS ボサートGT 19(1960〜1964年/欧州仕様)
シトロエンDS ボサートGT 19(1960〜1964年/欧州仕様)

果たして、その走りに興味が湧く。見た目のとおり、滑らかで軽快だろうか。全長が短い分、車重も軽い。実際にステアリングホイールを握ってみるしかない。

サルーンより長いドアを開くと、DS パラスと同じインテリアが視界に広がる。優しく身体を包む柔らかいクッションのレザーシートが、筆者を歓迎してくれる。空間も広々としている。

リアシートは、若干窮屈そう。わざわざ大金を払ってサルーンからクーペに仕立ててもらうのだから、それは織り込み済みということだろう。

メーターパネルには、イエーガー社製の黒い盤面の計器類が整然と並ぶ。スイッチ類には潔く機能の記載がない。点在するクロームメッキのアクセントが、見た目に心地良い。

ステアリングホイールは、大径なリムを1本のスポークが支えている。いかにもシトロエンらしいアイテムだ。

ペダル配置も、フレンチ・ブランドの伝統。中央には、マッシュルームのようにフロアから生えた、ブレーキ用の丸いボタンが付いている。少々の慣れが必要といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    セルジュ・コーディ

    Serge Cordey

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

イタリア仕立てのシトロエンDS ボサートGT 19 フルア・デザインの希少クーペの前後関係

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