6代目 ホンダ・シビック・タイプR(2) 運転体験の濃密な魅力 記憶に残る最後へ

公開 : 2025.10.13 19:10

欧州市場のシビック・タイプRは2026年が最後 330psの4気筒ターボ 充足感が段違いの6速MT クラスの枠を越えた動的能力 魅力度の濃いのFL5型の走りをUK編集部が再確認

魅力の濃い運転体験 充足感が段違いのMT

ホンダシビック・タイプRの2.0L 4気筒ターボエンジンは、雄叫びを上げることなく、低い響きでアイドリングを始める。自然吸気だった頃のような、華美な演出はない。

好ましい感触のシフトレバーを倒し、丁度良い重み付けのクラッチペダルを放せば、魅力度の濃い運転体験の始まり。これまで英国編集部が試乗してきた、どんなホットハッチより速さを追求できるよう、FL5型は仕上げられている。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

現存するMTの中でも、この6速がもたらす充足感は段違い。アクセルペダルを踏み込んだまま、シフトアップする「パワーシフト」も可能。気が遠くなるほどではないものの、胸のすくような加速へ浸れる。

他方、1速でクラッチを繋ぐ瞬間は、発生トルクが自動的に制限される。回転数とクラッチ操作をシンクロさせ、理想的な発進加速を引き出すことは少し難しい。AUTOCARの計測では、0-100km/h加速は5.9秒だった。

回すほど劇場感が増すK20C型エンジン

とはいえ、K20C型エンジンは回すほど劇場感が増していく。シリンダーは僅かにオーバースクエアな比率で、低域ではやや鈍さがあるものの、吹け上がりも鋭い。5000rpm以上での積極性は壮観といえ、7000rpmまで吸い込まれるように上昇する。

サウンドも聴き応えたっぷり。唸るように響く燃焼音や排気音に、ターボの高音が重なり、ジェットエンジンのような例えがたい音響へ包まれる。2速で100km/hに届き、5速で引っ張れば7100rpmのリミッターで240km/hへ到達する、ギア比も望ましい。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

ブレーキペダルの重さは中程度。制動力の発生は漸進的で、耐フェード性も高いようだ。

並外れた安定性 クラスの枠を越えた動的能力

操縦性の精度も申し分なし。180km/hという超高速域でのコーナリングも、至って安定。ブースト上昇を楽しめるパワーデリバリーだけでなく、ダンパーの減衰特性やシャシーの落ち着きは、並外れたものといっていい。

それでいて、ドライブモードによる変化度も広い。インディビジュアル・モードでは、ダンパーをソフトにし、それ以外をスポーティに調整可能。スプリングは硬めだが、つぎはぎの多い区間でも、乗り心地重視のモードへ切り替える必要性を抑えられる。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

リミテッドスリップ・デフが備わる、フロントアクスルのトラクションは高次元。情報豊かなステアリングと、確かなグリップ力も同様だ。ドライバーの気持ちを汲み取るように、高ぶらせるように、応えてくれる。

ただし大きめのサイズが影響し、鋭敏さは限定的。ひたひたと、カーブを抜けることを好むシャシーといえる。ドライ路面では、相当に攻め込まなければ限界には迫れない。クラスの枠を越えた、動的能力を秘めるともいえるが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

6代目 ホンダ・シビック・タイプRの前後関係

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