通常の約半分 ルノーはなぜ2年未満で新型『トゥインゴ』を開発できたのか 中国との競争とコスト削減

公開 : 2025.10.15 17:45

ルノーはわずか2年で新型EV『トゥインゴEテック』を開発しました。従来モデルの開発期間の約半分です。なぜ、どのように新型車の開発プロセスを加速させたのでしょうか。設計やテストの方法について解説します。

たった「100週間」で完成させた方法

その愛らしいカエルのような目をした顔からは想像もつかないが、来年登場予定の新型EV『トゥインゴEテック』はルノー史上最速のモデルとなる。そう、クリオV6やメガーヌRSトロフィーR、さらには1990年代にF1用V10エンジンを無理やり搭載したあのエスパスさえも凌ぐ速さだ。

ここで言う「速さ」とは開発スピードのことだ。トゥインゴEテックは、ルノーとして初めて2年未満(正確には100週間)で開発されたモデルである。これは従来の開発期間の半分だ。高性能車のラップタイム記録を脅かすものではないが、ライバルの中国メーカーに対抗し、新しい時代で競争力を維持しようとするルノーにとって極めて重要な意味を持つ。

トゥインゴEテックの基本形状が確定した時点で、100週間のカウントダウンが始まった。(画像はコンセプトモデル)
トゥインゴEテックの基本形状が確定した時点で、100週間のカウントダウンが始まった。(画像はコンセプトモデル)    ルノー

同社は開発期間短縮にかなりの力を注いできた。EV用プラットフォーム『Amprスモール』をベースとする既存の5 Eテックと4 Eテックは、それぞれ3年かけて開発された。トゥインゴは同プラットフォームを流用し、多くの部品を共有することでメリットを得ている。

ルノーはまた、欧州の一部の競合他社よりも比較的小規模なメーカーとして、そのスピード感を活かそうとしている。しかし、真の時間短縮は、企画、デザイン、開発、量産化のスケジュール短縮によって実現される。

中国メーカーとの激しい競争

では、なぜ急ぐのか? 第1の目的は、攻勢を続ける中国メーカーに遅れを取らないようにするためだった。しかし、ルノーのセドリック・コンベモレル副技術責任者が指摘するように、スピードアップは「市場動向への対応を迅速化させる」効果もある。

コンベモレル氏はバッテリー生産を例に挙げる。「2年前なら、ギガファクトリーを構え、バッテリーにリチウム(NMC)を選べば、世界の王者になれました。今や市場は『なぜLFPを採用しないのか』と問うています。スピードアップすれば、土壇場でも意思決定ができるようになります。1日で新型車を設計できると想像してみてください。トレンドや市場状況を把握した上で生産台数を決められるでしょう」

メガーヌEテックの開発には4年、5 Eテックは3年かかったのに対し、トゥインゴEテックは2年で完成した。(画像はコンセプトモデル)
メガーヌEテックの開発には4年、5 Eテックは3年かかったのに対し、トゥインゴEテックは2年で完成した。(画像はコンセプトモデル)    ルノー

もちろん、コンベモレル氏は1日で開発を終えられると言っているわけではない。2年でも十分にチャレンジングな目標だ。そして、その目標達成の鍵は、新技術にあると同氏は言う。「スピードと技術を切り離すことはできません。不可能です。両者は密接に結びついているのです」

開発加速プロジェクトは『Leap 100』と名付けられた。ルノーは上流工程(広範な計画立案とモデル選定)の時間を16%、開発(設計から技術改良まで)にかかる時間を41%、生産・流通ネットワーク構築などの最終量産化プロセスにかかる時間を26%削減することを目指している。

大まかに言えば、Leap 100は「7つ」の主要分野で時間短縮を図っている。すなわちガバナンス、多様性と複雑性、デザイン、品質管理、データとAI、検証と認証、サプライヤー戦略だ。以下に、その方法の一部を紹介する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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