通常の約半分 ルノーはなぜ2年未満で新型『トゥインゴ』を開発できたのか 中国との競争とコスト削減

公開 : 2025.10.15 17:45

デザイン

ルノーは設計プロセスを加速させるにあたり、特に人工知能(AI)といった技術の活用に重点を置いている。しかし、ChatGPTが新型車をデザインするわけではない。

「AIは単なるデータ、つまり知識です」とルノーのデザイン戦略・先端技術責任者ステファノ・ボリス氏は言う。「AIは知識を持ちますが、知識とは知性なのでしょうか?」

XRツールにより、仮想空間上でデザインを確認できる。
XRツールにより、仮想空間上でデザインを確認できる。    ルノー

例えば、AIに新型セニックのデザインを依頼すると、無数の画像から歴代モデルやルノーの他モデルを分析し、旧来のデザイン言語に基づいた独自解釈を提示するだろう。AIにはデザインを進化・発展させることはできないが、ボリス氏は「正しく活用」すれば助けになると述べている。

ルノー・グループは、4ブランド(ルノー、アルピーヌダチア、モビライズ)それぞれの機密データベースのみを用いて独自にAIモデルを開発した。社内デザイナーは自分の考えたデザインをアップロードでき、そのデータにアクセスできるのは本人だけだ。「それは彼らの『秘密のレシピ』です。デザイナー同士は仲間ですが、企画コンペでは勝つために競い合うので、各自の作業内容は共有したくないのです」とボリス氏は言う。

そして、AIモデルはスピードアップに活用される。ボリス氏は「人間の創造性が違いを生み出します。AIはそのための時間を増やしてくれるのです」と続けた。デザイナーはまずクルマ全体や特定パーツをスケッチし、AIツールで素早くデジタルモデルに変換する。完璧な変換ではないが、数秒で3Dモデルが完成し、その後調整に入ることができる。従来ならモデリングチームが1~2日かけて行う作業だ。

これにより技術的制約やエンジニアリング部門からのフィードバックを、3Dモデルに迅速に反映できる。また、ルノーではデザインの空力特性の予測にもAIを用いている。エンジニアリング部門が検証を行う前に、緻密な改良を加えることができる。

さらにルノーは、フランス、ルーマニア、韓国、ブラジル、インドに展開する5つのグローバルデザインセンターを活用し、設計プロセスをさらに加速させている。各センターでは地域特性に基づいたプロジェクトを主導し、相互連携によりほぼ連続的な作業を実現している。

XR(=エクステンデッド・リアリティ。VRやARなどの概念を包括した総称)ツールも活用している。これにより、インテリアデザインコンセプトなどの仮想現実(VR)作品を物理環境に重ね合わせることができる。例えば、実物と同じ寸法のモジュール式のコックピットモデルを用いれば、そこに座りながら、VR上でレイアウトを確認できる。単発の物理モデル製作が不要となり、さらなる時間短縮につながる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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