【現役デザイナーの眼:フェラーリ・ルーチェ】アップル製品のデザイン経験者ふたりが参加 インテリアはミニマルで質感高し

公開 : 2026.03.02 12:05

空間全体より各部品の方が主役

通常、カーデザインではインテリアにおいてもダイナミックな印象が求められますが、特にスポーツカーではその傾向が強いです。

近年のフェラーリでは、運転席と助手席をそれぞれ囲むようなデザインが特徴。ディテールにおいてもとにかくスポーティで、エクステリアと良く似たデザイン意図を感じます。

部品単体がそれぞれ製品のような仕上がり。専用ウェブの構成、見せ方がアップルのそれにかなり近い印象です。
部品単体がそれぞれ製品のような仕上がり。専用ウェブの構成、見せ方がアップルのそれにかなり近い印象です。    フェラーリ

しかしフェラーリの歴史を見ると、特に1980年代までのモデルはスタティックなインテリアが多いんです。当時のトレンドもありますが、機能的で余計な装飾は一切ありません。

細かな要素を見ても、例えば512BBやテスタロッサのメーター類は四角の中に円が入ったデザインをしています。今回のクルマも、これら1970〜1980年代のモデルからインスピレーションを得たのでしょう。

フェラーリ・ルーチェのインテリアにおいて画期的なところは、空間全体より各部品の方が主役に感じる点です。

これはフェラーリから公式に発表されている写真やウェブページの見せ方よるところもありますが、まず部品ひとつひとつを丁寧にデザインし、それらを組み合わせて空間を作るという、従来と逆の印象があります。

四角形のメーターユニットや中央のディスプレイは、アップル製品でお馴染みの高精度なアルミ筐体になっており、まるで単体で製品になっているかのような仕上がり。デジタルとアナログが見事に融合され、他メーカーのEVとは一線を画しています。やはり物理的な作り込みが重要なことをあらためて思い知らされました。

5月に明らかになるエクステリアに大注目

また、センターコンソールは通常脇役ですが、ここも部品単体にフォーカス。直線とコーナーRで構成されたデザインはこれまたアップルの製品のようで、ミニマルで質感の高いデザインをしています。

シートやステアリング、スイッチ類は、いかにもマーク・ニューソンらしいシルエット。レトロモダンという言葉は陳腐ですが、過去の優れたデザインと現代のテクノロジーを高次元で融合させた大変魅力的なデザインだと感じました。

今回インテリアが発表されましたが、空間全体の写真はまだありません。5月にその全てが明らかになります。
今回インテリアが発表されましたが、空間全体の写真はまだありません。5月にその全てが明らかになります。    フェラーリ

さて、注目のエクステリアデザインは、実車が発表される5月まで待たないといけません。最近のフェラーリはややディテール過多なところがありますが、このルーチェはインテリア同様にシンプルな方向でいくでしょう。

ただ、エクステリアはプロポーションやスタンスなど、より専門的な知見が必要です。そのあたりをどう見せてくるのか、もしかしたらこれまでのカーデザインの枠にとらわれない個性が見られるかもしれません。 

そうは言ってもフェラーリの顧客をしっかり満足させなければならず、ハードルはめちゃくちゃ高いですが、大変期待しています。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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