なぜ「面白味がない」中国製SUVが英国で大ヒットしたのか SNSで話題、ポイントはお買い得感【UK編集部コラム】

公開 : 2026.04.13 17:05

英国でこの頃、中国車のヒットが目立つようになりました。特にジェイクー7は、SNS上で「テム・レンジローバー」として話題となり、長年トップを独占してきた人気モデルをも凌駕する販売実績を残しています。

市場参入から1年で大躍進のジェイクー

中国ブランドのジェイクー(Jaecoo)が販売するSUV『7』が、3月の英国の新車販売台数で1位になった。このニュースはさほど驚きではなかったが(昨年はほぼ毎月トップ10入りを維持していた)、掘り下げてみる価値のある重要なトピックである。

このジェイクー7が英国のベストセラー車になることが、すでに必然のように感じられたこと自体が注目に値する。英国に進出してまだ1年しか経っていない中国ブランドによる、予想外の快進撃だ。日産キャシュカイキア・スポーテージといった従来の人気モデルと同様に、単なる売れ筋ではなく、もはや誰もが知る存在へと変貌を遂げようとしているのだ。

英国では3月、車種別新車販売台数でジェイクー7(画像)が首位に立った。
英国では3月、車種別新車販売台数でジェイクー7(画像)が首位に立った。

ジェイクーは、奇瑞汽車が展開するSUV専門ブランドで、2025年1月に英国市場に参入したばかりだ。その先駆けとなるモデルが7である。

客観的に見て、ジェイクー7は傑出したクルマとは言えない。AUTOCAR UK編集部がロードテストを行った際、同車に星2.5の低評価を付けた。予算重視のユーザー層にとっては「完成度が高く実用的」である一方、運転感覚は「煩わしく、注意を散漫にさせ、調整が不十分」で、「まったく面白味がない」と指摘。BYD、オモダ、長安汽車、リープモーターなど、この1年間に英国市場に投入された画一的な中国製SUVの数々と区別する要素はほとんど見当たらなかった。

そうした弱点にもかかわらず、多くのユーザーが購入をためらわなかった。ライバルの高級ブランドと同等の装備内容を、大幅に安い価格で提供するこのクルマには、確かに一定の魅力があるようだ。

SNSでは「テム・レンジローバー」の異名も

英国におけるジェイクー7の最大のセールスポイントに話を移そう。それはSNS上で「テム・レンジローバー(Temu Range Rover)」として知られるようになったことだ。少し目を細めて見れば、7万ポンド(約1500万円)の高級SUVのように見えるが、実際の車両価格はその半分だ。英国のSNSを見れば分かるように、これが多くの買い手を惹きつけている。

もちろん、テム・レンジローバーというのはジェイクー公式の謳い文句ではないが、実に見事なワードだ。ブランドにこだわらずに「掘り出し物をゲットした」という感覚は、多くの人にとって言葉にしがたいクールな魅力があるのだ。

英国仕様のジェイクー7
英国仕様のジェイクー7

ジェイクー(および兄弟ブランドのオモダ)にとって懸念されるのは、この1車種があまりにも好調なため、もはやそれ自体が独立したブランドとなってしまう点だ。ジェイクーは小型の『5』に続き、まもなく大型の『8』も投入する予定だが、7のオーナーたちはすでに深い愛着を持っており、他のモデルに乗り換えるかどうかは疑問だ。

また、英国の消費者が好意を抱き始めている中国車はジェイクー7だけではない。2026年第1四半期、MGの市場シェアは3.88%に達し、BYDもそれに迫る勢いだ。中国ブランドはもはや「到来しつつある」存在ではなく、「すでにここにいる」のだ。

そして、ジェイクー7を筆頭とする中国車のヒットに対し、欧州の自動車メーカーは危機感を抱くはずだ。中国からの輸入車が増え続ける中、多くの欧州メーカーは自社のブランド力をさらに強化しようとしている。欧州の消費者は、慣れ親しんだ企業やエンブレム、モデルを重視するだろうと信じているからだ。しかし、販売データでは、メーカーが期待するほど消費者は忠実ではない可能性が示唆されている。特に、お買い得品を手に入れられると思えばなおさらだ。

数年後のオーナーの評価は?

ジェイクー7の歴史はまだ始まったばかりで、英国での販売開始からまだ1年ほどしか経っていない。ジェイクーは、「テム・レンジローバー」という話題が下火になり、さらに多くの同価格帯・同サイズのライバルが市場に参入した際にも、この成功を持続しなければならない。

注目したいのは、数年後、ジェイクー7のオーナーがリース契約を更新したり、買い替えたりする時期が来たとき、AUTOCAR UK編集部が指摘したような走行性能や使い勝手の欠点にうんざりしているかどうかという点だ。それとも、あまりにもお買い得なため、まったく気にしていないのだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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