その名は今も生きる 「ビッグスリー」に挑んだ米国有数の自動車メーカー カイザー・フレイザーの栄枯盛衰(後編) 後世に残した功績

公開 : 2026.05.06 11:45

医療業界への貢献

カイザー氏の名は、カイザー・パーマネンテという大手医療企業にも受け継がれている。これはカイザー氏が1930年代に従業員への支援を目的に設立した組織で、1945年からは一般市民にもサービスを提供するようになった。本稿執筆時点で、同社は39の病院と700の診療所を運営し、約30万人を雇用している。2023年10月、人員配置に抗議して多数の職員がストライキを行ったことで、ニュースでも大きく取り上げられた。

では、ヘンリー・カイザー氏自身についてはどうだろうか。彼は確かに気まぐれな人物だが、これは自力で成功した億万長者にとって、欠点というよりむしろ長所と言えるだろう。結局のところ、彼は善良な人物だったようで、晩年にはこう語っている。「わたしがこの世を去った後、人々はダムや船のことを忘れてしまうかもしれない。しかし、痛みや苦しみを和らげる医療の恩恵だけは決して忘れないだろう」

医療業界への貢献
医療業界への貢献

現在のカイザー・フレイザー

カイザー・フレイザーのオーナーズクラブは活発に活動しており、SNSグループも賑わっている。多くのオーナーたちが情報やアドバイスを交換し合っているのだ。もし彼らの仲間に加わりたいなら、最も売れた主流モデルを選ぶのが手頃な方法だ。1951年式カイザー・デラックスは、現在約1万2000ドル(約190万円)で取引されている。より希少な1954年式カイザー(写真)は、同シリーズの最終モデルであり、現存する車両の中でも特に人気が高い。

一方、カイザー・ダーリンは非常に高価だ。錆びないファイバーグラス製ボディ、奇抜な外観、そして生産台数が少なかったことがその理由だ。状態の良いものは10万ドル(約1560万円)以上で取引されており、2016年には初期モデルがオークションで20万ドル(約3130万円)で落札された。ただ、走行性能は期待しないほうがいい。直列6気筒エンジンの最高出力は90psで、0-97km/h加速に15秒を要し、最高速度は約150km/hにとどまる。だが、これほどユニークなクルマも珍しい。

著者紹介

現在のカイザー・フレイザー
現在のカイザー・フレイザー

ライターのパトリック・フォスター(Patrick Foster)は、30年以上にわたり自動車産業のさまざまな側面を研究し、米国のクラシックカー雑誌の多くに寄稿してきた。著書には『13 Lost Car Legends- America’s Independent Car Companies 1945〜1985』などがある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

カイザー・フレイザーの栄枯盛衰の前後関係

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