鍵を握るのは柔軟性 ランボルギーニを変革したステファン・ヴィンケルマンCEO:イシゴニス賞(後編) #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.01 18:10

夢を超える完璧なクルマ

ランボルギーニはまた、ますます複雑化し、細分化が進む市場において、より多くの競争に直面している。では、何が差別化要因となるのだろうか。ブランドか、伝統か、それともモデルか。

「間違いなくそのすべての組み合わせです」とヴィンケルマン氏は言う。

ランボルギーニ・テメラリオ
ランボルギーニ・テメラリオ

「クルマの重要な要素はデザイン、パフォーマンス、そして情感です。これこそがお客様の期待するものです。わたし達は、夢を超える完璧なクルマを作り出さなければなりません。結局のところ、わたし達が売っているのは単なる移動手段ではないのです」

「そして、希少性と残存価値のバランスを取らなければなりません。これは常に念頭に置いておくべきことであり、ブランドは製品そのものと密接に結びつかなければなりません。わたし達は、勇敢(brave)で、予想外(unexpected)であり、本物(authentic)であると自認しています。その勇敢さは、挑戦そのものに魅力を感じ、何かを創造しようとした創業者の精神に由来します。彼は『自分のやりたいことをやる』と言い、今、わたし達は誰も予想しなかったような製品を数多く生み出しています」

「本物であるためには、自らのルーツにしっかりと根ざしていなければなりません。これは重要な要素の1つです。新しいクルマについて考え始めるたびに、自分たちがどこから来て、どのような環境にいるのかを知らなければなりません」

EVモデル投入計画は保留

現在、自動車業界全体が直面している大きな課題は電動化であり、ランボルギーニのような小規模メーカーにとってはさらに厳しい課題だ。ここでもフォルクスワーゲン・グループとのつながりが技術向上の助けとなっているが、高級・高性能車分野における電動化への需要は不透明だ。

ランボルギーニはスーパーカーの両モデルラインでハイブリッド化に成功しているが、『ランザドール』コンセプトで示されたフルEVを追加する計画は白紙に戻された。その第4の製品ラインは、今後プラグインハイブリッド車となる予定だ。

ランボルギーニ・ランザドール・コンセプト
ランボルギーニ・ランザドール・コンセプト

フェラーリのような企業がEV開発を推進している中、ランザドールの開発を保留にしたランボルギーニの決定は謙虚と言えるものだった。しかし、ヴィンケルマン氏はこう語る。

「先ほども申し上げたように、わたし達は単なる移動手段を売っているわけではありません。通常、当社のお客様はガレージに5台以上のクルマを所有しているため、このようなクルマ(EV)を所有することは必須ではないのです」

「夢や情感的な側面、そしてパフォーマンスといった要件を満たさなければ、それらを失うリスクがあります。技術面でのあらゆる進歩は重要ですが、人々が買わなければ、それがどれほど先進的な技術であっても意味がありません。わたし達は常に、ブランドのDNAとは何か、そして現在の環境においてどのような目的を持つべきかを見つめなければなりません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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