ビジネスモデルを変える革命が進行中 フォード:モータースポーツ賞(後編) #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.07 17:10

モータースポーツのノウハウを市販車にも

ラッシュブルック氏は、「わたし達は、技術的深度の異なるレベルで各プログラムに取り組んでいます。エンジンだけの場合もあれば、車両全体に関わる場合もあります」と語る。

また、フォード・レーシングは、各プロジェクト間、ひいては会社全体で知識が共有されるような体制を整えている。

モータースポーツの知見を活かして開発されたフォード・マスタングGTD
モータースポーツの知見を活かして開発されたフォード・マスタングGTD

「知識と経験を即座に共有できる体制を整えています。パワートレインチーム、車両エンジニアリングチーム、そして機能別チームがあり、これらのチーム間では人員を柔軟に行き来させています」とラッシュブルック氏は語る。

「その好例がGT3エンジンです。Mスポーツが生産を担当していますが、設計はすべて社内で手掛けています。その知見を活用して、今後ディーラーに並ぶフォード・レーシング製品に搭載される将来のエンジンアーキテクチャーの開発に取り組んでおり、さらにその知見はハイパーカーのエンジンにも活かされています」

フォードのグローバル展開は35のカテゴリーに及ぶ広範なものだが、いずれも厳選されたものだ。では、同社はどのようにして参戦するカテゴリーを選んでいるのだろうか?

「人々は『ああ、フォードはどこでもレースをしているんだな』と思うかもしれませんが、実際には非常に規律正しいのです」とファーリー氏は説明する。

「ビル、わたし、マーク、そして会社のリーダーたちを含む戦略委員会があり、四半期ごとに集まって、これをビジネスとして扱っています。会社としてどこへ向かいたいのかを明確にしており、そこに到達するために参戦すべきシリーズを逆算して決定しているのです」

中国メーカーとの競争も強く意識

ファーリー氏はさらに、「欧州では、ぜひお話ししたいことがたくさんあるのですが、競争が激しいため、今は話せません」と述べた。しかし、「今後4、5年のうちに、この話が現実のものとなり、『ああ、この人が言っていたのはこれだったんだ』と皆さんが思うようになるでしょう」と断言した。

「欧州では、中国メーカーに打ち勝つための極めて明確な方向性を定めており、モータースポーツがその達成に不可欠な役割を果たします。おそらく、人々の想像とは異なる形になるはずです。製造、製品、ブランドを総合的に考慮した上で、この戦略を選びました。わたし達は常に『レース活動は当社の主力製品をより良いものにするだろうか?』と自問しています。答えが『イエス』であれば、資金を投じるつもりです」

フォードは欧州市場向けに、「ラリーで鍛えられた」モデル群を投入する計画だ。
フォードは欧州市場向けに、「ラリーで鍛えられた」モデル群を投入する計画だ。

ファーリー氏の言葉は現実のものとなりつつある。彼とのインタビュー以来、フォードは「ラリーで鍛えられた」デザインとダイナミクスを備えた、欧州市場に焦点を当てた新型車の計画を発表している。彼の発言から、それが単なる宣伝文句ではないことが示唆されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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